最新記事

中東

イラン・イスラエル戦争が始まる? 核合意離脱で一気に不安定化する中東

2018年5月11日(金)14時10分
クリスティナ・マザ

イスラエル軍のダマスカスへのミサイル攻撃(5月10日) Omar Sanadiki-REUTERS

<トランプ政権のイラン核合意離脱を受けて、イランがイスラエルへの攻撃を開始。この軍事衝突は戦争へと発展するのか>

シリア国内に展開するイランの革命防衛隊が、ゴラン高原を占領するイスラエル軍拠点をロケット弾で攻撃した。これに対してイスラエル軍はシリア領内のイランの軍事拠点数十カ所を報復攻撃した。

ドナルド・トランプ米大統領がイラン核合意からの離脱を表明して以降、これがイランとイスラエルの間の最初の軍事衝突となる。イランと敵対するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、トランプの核合意離脱を強く支持していた。ホワイトハウスは10日に出した声明で、イラン側のロケット弾攻撃は非難したが、イスラエル側からの報復攻撃については言及しなかった。

「アメリカはイラン政府によるシリア領内からのイスラエル市民に対する挑発的なロケット攻撃を非難し、イスラエルの自衛行動を強く支持する。イラン政府による、イスラエル攻撃を目的としたロケット弾、ミサイルシステムの配備は、中東地域全体にとって受け入れ難く、極めて危険な状況だ」と声明は述べている。

「イランの革命防衛隊には、今回の無謀な行動の結果の全ての責任がある。アメリカは革命防衛隊と(シーア派武装組織の)ヒズボラなど関連の軍事組織に対してこれ以上の挑発行動に出ないことを要求する」

イスラエル軍によると、10日未明に革命防衛隊が約20発のロケット弾でゴラン高原のイスラエル軍拠点を攻撃。イスラエルのミサイル防衛システムがそのうち何発かを撃ち落としたが、何発かは軍事施設にも着弾して被害が出た。イスラエル側での負傷者は報告されていない。

これに対してイスラエルのアビグドール・リーベルマン国防相は、2011年のシリア内戦勃発以降、最大規模の攻撃をシリア領内で実施し、シリア国内のイランの「ほとんどすべて」の軍事拠点を攻撃したと語っている。

人権団体の「シリア人権監視団」は、イスラエル軍の攻撃によってシリア全土でシリア兵士ら少なくとも23人が死亡したとしている。しかしシリア軍は、イスラエルのミサイル攻撃はほとんど迎撃され、攻撃による死亡者は3人だけだったと発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米制裁は「たわ言」、ロシアの大物実業家が批判

ワールド

ロシアの石油・ガス歳入、5月は3分の1減少へ=ロイ

ビジネス

中国碧桂園、清算審理が延期 香港裁判所で来月11日

ワールド

米声優、AI企業を提訴 声を無断使用か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中