最新記事

シリア内戦

化学兵器疑惑のシリア政権 欧米の報復受けても優勢持続の背景

2018年4月24日(火)16時06分


民間人の避難

一時は東グータ地区で最大の反体制派グループだった「ジャイシュ・アル・イスラム」は、ドゥーマ防備を徹底的に固めたと主張していた。政権側が奪還を試みれば大きな犠牲を伴う、という意味だ。

また同グループは、内戦中に建設した兵器工場があるため、持ちこたえられるとしており、市民への食糧供給も1年間は問題ないと述べていた。

4月7日の攻撃に先立つ年月のあいだに、すでに何十万もの住民がこの地域から退避していたが、まだ数万人が残っていた。

ロシア軍当局者との交渉のなかで、「ジャイシュ・アル・イスラム」側は、ロシア側の憲兵隊を市内に受け入れつつシリア軍の立ち入りは拒否し、同グループ戦闘員は地元の治安部隊として留まることを認めるという合意を求めていた。

前述の同組織幹部によれば、化学兵器使用が疑われた攻撃の2日前までは、ロシア側が新提案を検討すると約束しており、協議は順調に進んでいるように思われたという。

だが、攻撃の翌日にロシアが示した回答は「化学兵器による新たな攻撃か、シリア北部への撤退か」という脅迫だったという。

その日の午後、これまでで最も激しい空爆がドゥーマに対して行われた。国営放送のライブ映像には、黒い煙が厚い雲のように市街から立ち上る様子が映し出された。

アサド政権側は、「ジャイシュ・アル・イスラム」がダマスカス市内の住宅街を砲撃したと主張。同グループが拉致した兵士や市民を解放するという約束を反故にしていると非難している。

「ジャイシュ・アル・イスラム」は攻撃を否認。同幹部は「われわれが戦っている相手はロシアであり、政権側ではなかった」と言う。

「ロシア側が怒った」

アサド政権支持の指揮官は、匿名を希望しつつ、攻撃準備のために軍が動員されたのは4月6日で、「ジャイシュ・アル・イスラム」がドゥーマからの退去という合意を反故にして、受け入れ不可能な要求を持ち出した後だと話している。

要求の内容には、同グループを政党として合法化することや、シリア軍がドゥーマに立ち入らないことなどが含まれていた。アサド政権支持の指揮官によれば、ロシア側は憤激したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中