最新記事

中朝会談

中朝首脳会談から見る非核化問題──機密解除された外交文書から

2018年3月30日(金)19時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中朝首脳会談における金正恩委員長と習近平国家主席 Kim Hong-Ji-REUTERS

中朝首脳会談の中で最も注目されるのは北朝鮮の非核化問題だ。習近平と金正恩の非核化に関する発言と中朝両国における報道、および30日に機密解除された外交文書から読み解く(李英和教授のご協力を得た)。

習近平と金正恩の発言と報道

26日に北京の人民大会堂で行なわれた習近平国家主席と金正恩委員長との間の中朝首脳会談で、北朝鮮の非核化問題に関して、両者がどのように発言したのかを、断片的だが先ず拾ってみよう(敬称略)。

金正恩:

「金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺訓に基づき、半島の非核化の実現に尽力することは、われわれの終始変わらぬ立場である」

「南朝鮮(韓国)とアメリカが、われわれの努力に善意で応じ、平和的かつ安定的な雰囲気を作り、和平実現のために歩調を合わせた措置を講じるならば、半島の非核化の問題は解決されうる」

習近平:

「朝鮮半島情勢に前向きな変化がある。北朝鮮は大きな努力を払っている」

「我々は非核化の目標と対話による解決を堅持している」

金正恩の「南朝鮮とアメリカが、われわれの努力に善意で応じ、平和的かつ安定的な雰囲気を作り、和平実現のために歩調を合わせた措置を講じるならば、半島の非核化の問題は解決されうる」という発言は、「もしアメリカが圧力路線から転換するならば」という条件を前提としているものと解釈することができる。そうであるならば、朝鮮半島の非核化問題は解決できると、金正恩は考えていることになろうか。

中国の中央テレビCCTVは、習近平が金正恩の「朝鮮半島の非核化に向けた努力を表明したことを高く評価した」と述べている。中国は早くから朝鮮半島の非核化を主張しており、特に北朝鮮の核開発に関しては、断固反対であることを表明してきた。自国の利益を守りたいなら、核やミサイルを放棄して、改革開放に着手せよというのが中国の主張だ。

一方、報道の仕方を見るならば、北朝鮮の朝鮮中央通信は直接非核化については触れていないのが特徴だ。

3月30日に公開された機密外交文書が語るものは?

では北朝鮮は実際問題として、非核化に関してどうするつもりなのだろうか?

3月30日、関西大学の李英和(リ・ヨンファ)教授から連絡があった。韓国の聯合ニュースが、1987年の外交文書が機密解除され、本日公開したことを伝えたとのこと。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中