最新記事

M&A

ダイムラー筆頭株主に躍り出た中国自動車メーカー吉利の「秘密工作」

2018年3月18日(日)20時14分

3月2日、独自動車大手ダイムラーは、中国の自動車メーカー浙江吉利控股集団が、同社の株式約10%を取得したことを2月23日発表し、金融市場とドイツ監督当局を仰天させた。写真は吉利の李書福董事長。独ベルリンで2016年10月撮影(2018年 ロイター/Hannibal Hanschke)

独自動車大手ダイムラーは2月23日、中国の自動車メーカー浙江吉利控股集団が、同社の株式約10%を取得したことを発表し、金融市場とドイツ監督当局を仰天させた。

突然の動きに見えたが、吉利集団の董事長(会長)を務める李書福氏は、数カ月かけて、これだけの株式を取得するための下準備をひそかに整えていたことが、ロイターが取材・検証した複数の情報提供者・資料から明らかとなった。

吉利社内の情報提供者2人、また同社に近い人物1人によれば、吉利幹部の李軼梵氏が、1年以上前から、ダイムラー株取得を任務とする少人数のチームを率いていたという。

香港の複数のペーパーカンパニー、デリバティブ、銀行融資、慎重に構築された株式オプションを駆使することにより、李書福氏はその計画の秘密を守り続け、突如として、ダイムラーの筆頭株主に踊り出ることが可能になったのである。

結果として投資額は90億ドル(約9500億円)に達したが、ある企業における議決権付き株式の比率が3%・5%を超過した場合にドイツ当局に通知することを投資家に義務付ける情報開示ルールは回避された。上述のような方法で保有株式を積み上げたため、吉利がそうしたルールに違反した兆候はまったく見当たらない。

ダイムラーの上級幹部の1人は「李氏が投資すること自体は意外ではなかった。だが、そのやり方には本当に驚いた」と話した。

数合わせのゲーム

株式を集めるために用いられたペーパーカンパニー「Tenaciou3 Prospect Investment」は、昨年10月27日に香港で設立された。香港の会社登記所に提出された書類によれば、同社の発行済み株式は1香港ドル(約14円)の普通株1株である。取締役は李軼梵氏1人だけだ。

ロイターが11月に報じた通り、ダイムラーは株式取得あるいは技術提携の締結に向けた吉利からの提案を拒否していた。その翌月、Tenaciou3はモルガン・スタンレーおよびバンクオブアメリカ・メリルリンチとの間で、間接的な方法によるダイムラー株取得に向けて支援を得る旨の契約を結び、香港会社登記所への登記書類を提出していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金融当局、銀行規制強化案を再考 資本上積み半減も

ワールド

北朝鮮、核抑止態勢向上へ 米の臨界前核実験受け=K

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中