最新記事

北朝鮮情勢

国連事務次長訪朝の背後に中国か?

2017年12月6日(水)15時45分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

グテーレス国連事務総長 Jonathan Ernst-REUTERS

中国特使の訪朝に関し、中国は「これはまだ第一歩だ」と言っていたが、その後水面下で、ポルトガル領だったマカオ返還を通して親密にしてきた現在のグテーレス国連事務総長を動かしていたものと考えられる。

グテーレス氏は「対話による解決」派

国連のフェルトマン事務次長が12月5日、北朝鮮を訪問した。北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相らとの会談を予定している。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は北朝鮮問題に関して、かねてより「対話による」解決を主張しており、日米が強行する「圧力と制裁」の効果には疑問を呈している。中国政府関係者は、筆者に「環球時報の社説を詳細に読んでくれ」という言葉を残していた。

11月20日付のコラム「北朝鮮問題、中国の秘策はうまくいくのか――特使派遣の裏側」に書いたように、習近平の特使(宋濤)が帰国した後の「環球網」には「一回の訪問で問題が解決することはない」と書いてある。筆者はそれに対して、「つまり中国は、これまで練ってきた秘策を実行に移す用意はあるが、しかし一気に解決するというわけにはいかず、スタート地点にようやく立ったと言いたいのだろうと判断される」と書いた。

グテーレス事務総長は、1998年から頻繁に訪中しており、習近平国家主席とも李克強首相とも何度も会っている。また王毅外相とは、つい最近も会談し、北朝鮮問題に関して意見交換をしている。

国連としてはアメリカの意思を重視しなければならない立場にあるのかもしれないが、フェルトマン事務次長はグテーレス事務総長の意向を伝える可能性がある。つまり、中国の考え方を伝えて北朝鮮を説得する可能性があるということだ。

中国とグテーレス氏の親密な関係――マカオ返還をきっかけとして

ポルトガル領だったマカオが正式に中国に返還され中国の特別行政区となったのは1999年12月20日のことである。その前の年の1998年、グテーレス氏はポルトガルの総理として中国を訪問し、江沢民国家主席と会っている。1999年には社会主義インターナショナルの議長に就任。2001年12月にポルトガルにおける選挙で敗北し総理を辞職すると、今度は2004年、ポルトガルの社会党主席の身分で訪中。胡錦濤国家主席と会見した。

2005年6月に国連難民高等弁務官に選任されると、その翌年の2006年に訪中し、再び胡錦濤国家主席と会っている。

2016年10月6日のグテーレス氏の国連事務総長就任決定に合わせて、同年10月10日、中国はマカオで「中国―ポルトガル 国家経済協力フォーラム」を開催し、李克強が出席した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中