最新記事

アメリカ政治

アメリカの「政府機関閉鎖」と「債務上限問題」の基礎知識

2017年8月24日(木)10時50分

8月23日、トランプ米大統領が、メキシコとの国境の壁建設の財源確保のためなら連邦政府機関閉鎖も辞さない構えを示したことで、9月に2つの重要法案(歳出予算法案と債務上限引き上げ法案)が議会を通過するのかどうか予断を許さなくなってきた。写真は22日、米アリゾナ州を出発するトランプ氏(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

トランプ米大統領が22日、メキシコとの国境の壁建設の財源確保のためなら連邦政府機関閉鎖も辞さない構えを示したことで、9月に2つの重要法案(歳出予算法案と債務上限引き上げ法案)が議会を通過するのかどうか予断を許さなくなってきた。

政府機関閉鎖や債務上限の基本的な知識や過去の事例、現在の環境は以下の通り。

<政府機関閉鎖とは>

議会は今会計年度が終了する9月末までに、連邦政府の活動予算を手当てする新年度の歳出法案を成立させなければならない。これまでしばしば見られたように合意が得られない場合、まずはつなぎ予算案を承認しつつ、新年度の本予算の協議を続けるケースが多い。つなぎ予算と本予算のどちらも折り合いがつかないと、政府機関は閉鎖される。これは1970年代以降、何度も発生した。通常は数日間だが市場の動揺を誘いかねない要素だ。

直近で政府機関閉鎖が起きたのは2013年10月。オバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡る与野党の対立が原因だった。1990年代には3回の閉鎖があり、最長21日続いた。1970年代と80年代は計14回で、あるケースは部分的な閉鎖にとどまり、ほとんどは数日で終わった。

<債務上限とは>

債務上限は、連邦政府が財務省証券(国債)を発行して借り入れられる金額を法的に定めたもの。実際の借り入れ額が上限に達すると、議会が上限を引き上げる必要があり、できなければ政府はデフォルト(債務不履行)に陥る。

財務省は9月29日までに議会が債務上限を引き上げてくれることを要望している。ただし財務省には緊急時の予備財源があるため、デフォルトが起きるのは早くて10月半ば以降になる。

債務上限引き上げ法案はどんなに遅くても10月初めか半ばまでに可決されなければならない。

これまでの政治停滞で債務が上限に達して支払いができなくなったことはないが、間一髪の状況は3回あった。2011年8月には、与野党の対立が激しくなったためスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の格付けを最上位から引き下げ、市場は2週間にわたり2007─09年の世界金融危機以降で最大の混乱をきたした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中