最新記事

難民問題

英仏がドーバー海峡で難民の押し付け合い

2016年8月31日(水)18時45分
ジョシュ・ロウ

Philippe Laurenson-REUTERS

<ドーバー海峡を挟んだ英仏間で、難民をめぐる醜い争いが始まった。フランス側の町カレーが難民のイギリス流入を食い止めている現状に、フランスから不満の声が上がっているのだ。これに対しイギリスは、難民の負担が増えるならフランスとの対テロ協力を減らすと脅しをかけるが> (2017年の仏大統領選出馬を表明しているニコラ・サルコジ元大統領も難民論争に参戦)

 難民の扱いをめぐり新たな論争が起こっている。舞台は英仏の間のドーバー海峡。イギリスを目指して中東やアフリカからフランス側の都市カレーにたどり着く難民を、イギリスが受け入れずにフランスに押し付けているという不満が表面化し始めた。

事実上の流入規制

 英仏間の国境管理に関するル・トゥケ協定では、イギリスに難民申請をするにはイギリスに入国していることが条件とされている。カレーには英当局職員が滞在して難民のパスポートチェックはしているが、イギリスへの入国が却下されれば、その時点でイギリスへの難民申請は不可能になる。難民たちはフランスに難民申請するか、ドーバー海峡トンネルに向かう車や電車に飛び乗って違法入国を図ることになる。それで命を落とした難民もいる。

【参考記事】英仏海峡の高速鉄道、屋根に難民!で緊急停止

 着の身着のまま逃れてきてパスポートなど持たない難民を、事実上フランスに押しつける協定だとして、カレーでもイギリスへの難民申請を受け付けるか、イギリスを目指す難民については自国で難民申請を受け付けるよう修正すべきだという声が相次いだ。

【参考記事】「イギリスがEU離脱なら、移民流入させる」マクロン仏経済相

 カレーを管轄下に置く自治体のトップは言う。「カレーに到着した難民でイギリスを目指す者は、カレーで難民申請をできるようにするべきだ。それで申請が却下されれば、フランスは彼らを出身国へ送り返すことができる」

 2017年の大統領選出馬を表明しているニコラ・サルコジ元大統領も最近の演説で「イギリスは国内に窓口を作って自国の難民は自国で面倒を見ることを要求する」と主張した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中