最新記事

事件

ジョディ・フォスターを振り向かせるために大統領を撃った男の最後のラブレター

2016年7月28日(木)16時00分

Mario Anzuoni-REUTERS

<35年前、女優のジョディ・フォスターの気を引くためにロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂事件を起こし、フォスターの心に恐怖とトラウマを残したストーカーのヒンクリーが来月、精神病院を退院することになった。以下は、ヒンクリーがレーガンを襲う1時間前までフォスターに書いていたラブレター>

 1981年3月30日、ジョン・W・ヒンクリーJr.はワシントンでロナルド・レーガン大統領(当時)とその側近3人を銃撃した。それから30年以上を刑務所の精神科病棟で過ごした後、ワシントン米連邦地裁は昨日、バージニア州ウィリアムスバーグの母と共に暮らしたいというヒンクリーの訴えに応じ、入院措置を来月解除すると決定した。危険性はなくなったという判断だ。1年後には、一人かグループホームで暮らせるようになる可能性もある。

 1981年4月13日、本誌は大統領を殺そうとしたこの男の特集を組んだ。以下はその抜粋だ。事件を起こす前に女優のジョディ・フォスターに書いた最後のラブレターだ。ヒンクリーは、映画『タクシードライバー』で娼婦役を演じたフォスターに一目惚れしてストーカーになり、大統領を殺せばフォスターに好いてもらえるという妄想を抱いていた。


やあジョディ、

 レーガンを暗殺しようとすれば、こっちが殺される可能性も大きい。だから今のうちに君に手紙を書いておく。

 知ってのとおり、僕は君のことをとても愛している。この数カ月、多くの詩や手紙やメッセージを送った。ひょっとしたら君が僕に興味を持ってくれるのではないかと思ったからだが、そうはならなかった。

 少なくとも君が僕の名前を知っていて、僕が君のことをどれほど好きかも知っていてくれているのは嬉しい。僕が君の家のドアの下や郵便受けに残したメッセージが迷惑だったのはわかっているが、僕にとってはこの方法が一番ラクに想いを伝えられる方法だった。

 君とは電話で2回話したけれど、君に直接自己紹介する勇気はどうしても出なかった。内気なせいもあるが、本当に君の邪魔をしたくなかったんだ。そして君の宿舎の周りを行き来しながら、僕は気づいた。僕は笑い者かもしれないが、世間話以上の存在だと。少なくとも君は、僕がずっと君を愛することを知っている。

 ジョディ、もし君の心を奪い、残りの人生を共に過ごせるなら、レーガンを殺す計画はすぐやめる。認めるよ。僕がこんなことをするのは、今すぐ君にわかってもらいたいから。君のためならこれだけのことができるんだということを、はっきりとわかってもらわなければならない。自分の自由やひょっとしたら命さえ犠牲にしても、君に僕のほうを振り向いてもらいたい。これから1時間後に、(レーガンのいる)ヒルトンホテルに向かう。

 ジョディ、お願いだから自分の心をよく見つめて、こんな歴史的偉業を果たす僕に、君の尊敬と愛を勝ち取るチャンスをくれ。

永遠の愛を、
ジョン・ヒンクリー


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:4月CPI、利下げに向け物価情勢好転待つ

ワールド

米、ウクライナ防衛事業基金に20億ドル ロシア領内

ワールド

米、今秋に中国製「つながる車」規制案 商務長官「安

ワールド

ロ中など米選挙介入の動き活発化、情報機関が見解 A
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中