最新記事

消費

新型コロナで増えた消費、減った消費──巣ごもり・デジタル需要は増加、外出型消費は大幅減

2020年5月26日(火)12時05分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

3|シェアリングサービスは明暗──出前などの配達系は需要増、モノやスペースなどのシェアは一旦ストップ

手元にデータはないが、近年、消費行動において存在感を増しているシェアリングサービスの状況について考察したい。シェアリングサービスには、モノや移動手段、スキル、スペースといった多様な領域があるが、一部を除き多くの領域で新型コロナによる打撃を受けていると考える。

需要が増しているのは、配達系(移動手段)のシェアリングサービスだ。前述の通り、出前やネット通販の利用が増えているためだ。また、スキルのシェアのうち、英会話やヨガをはじめレクチャー形式でオンライン対応(切り替え)が可能なサービスは、時間のある巣ごもり生活では、むしろ需要がじわりと高まっている部分もある。

一方で、他のサービスは厳しい状況にあるだろう。非接触志向の高まりによって、今、他人と何かをシェアすることへの抵抗を感じる消費者は多いと考えるためだ。また、シェアリングサービスでは、カーシェア1や民泊、外出用の服やバッグのシェアなど、外出型の消費行動に伴うサービスも多い。よって、外出自粛によって需要が一旦止まってしまっている。

スキルのシェアとして見られる家事代行やシッターサービスについては、子どもの休校や学童・保育所の休所が続く中で、平常時より、むしろ強い需要があると言える。しかし、消費者がサービス利用を控える(あるいは提供者が出向くことを控える)傾向もあるだろう。

今後の消費行動──しばらくは巣ごもり型を軸に身近な外出型消費から、働き方変化などの要因も

新型コロナの感染拡大によって、巣ごもり消費やデジタル消費は増える一方、外食や旅行、レジャー、ファッションといった外出型の消費は大幅に減り、明暗が分かれている。今後、新型コロナの収束が見え、緊急事態が解除される地域が増えていけば、徐々に巣ごもり型の消費行動が減り、外出型の消費行動が増えていくのだろう。しかし、ウィルスに対峙する科学的な方法が明らかにならない限りは、即、元通りの状況にはなりにくい。ウィルスとの戦いは長期戦になるという見方もあるため、しばらくは、外食などの身近な外出型の消費行動で外出自粛のストレスを少しずつ解消しつつ、巣ごもり型を軸とする消費行動が続くだろう。また、雇用環境が急速に悪化しているため、収入が減少することで、必需性の低い消費には充てにくくなるという要因もある。

――――――――――
1 カーシェアでは通勤せざるを得ない場合の通勤手段など、非接触志向の高まりによって逆に一部で需要が増している状況もあるようだ。このような状況はスペースのシェアなどでも見られるだろうが、全体としては厳しい状況にあるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中