最新記事
映画

ブラピとアンジーの不朽の名作「スミス夫妻」がアマプラでリメーク、新生版はリアル路線

2024年3月5日(火)20時50分
ナディラ・ゴフ(スレート誌カルチャー担当)

240305p56_MMS_02.jpg

「夫」のジョン AMAZON MGM STUDIOS

カップルの永遠の真理

奇抜な状況とはいえ、このスミス夫妻は現実的な結婚の肖像でもある。

映画版では互いに夢中だったが、本作のジョンとジェーンは手探り状態だ。

いずれ恋に落ち、本物のカップルになるのは最初から分かっていても、そこに至るまでの道のりが丁寧に描かれるのはうれしい驚きだ。

どんな恋人同士もそうであるように、彼らは少しずつ距離を縮めていく。

皿洗いをめぐる生活感たっぷりの議論を交わし、同じベッドで寝るという難しい選択をする。

主役2人の相性は素晴らしく、時にはセクシーさも感じるが、最も説得力があるのは言い合いをして、同じ空間に一緒にいるコツを学んでいく姿だ。

寝ながらおならをしたことをジェーンが恥ずかしがる場面は最高に笑えるし、身につまされる。

互いの最悪の欠点や過去について尋ね、その答えが次第に曖昧なものでなくなっていくのは、関係が深まっていくしるしだ。

ドラマが進むにつれて、内容はアクションや陰謀に満ちた映画版に近くなるが、結婚の描き方はもっと真剣だ。

人はなぜ結婚するのか。そもそも結婚とは何か。

その答えを探るのは、爆発の連続の銃撃戦と同じくらい刺激的だ。

映画版の各所に挿入されていた夫婦カウンセリングは、本作では丸々1つのエピソードになっている。

その場でジョンとジェーンが語るのは、募る不満だ。

懸命に関係を続けてきた長年のカップル、または険悪な仲になっていく両親の姿を目にした人なら、この異彩を放つエピソードに胸を突かれるのは間違いない。

時がたつうちに(筆者の最大の不満は、それがどれほどの長さかはっきりしないことだ)ジョンとジェーンの互いの信頼は揺らぎ、ミッション成功の手柄をめぐって怒りが芽生え、おなじみの「子供が欲しいか、欲しくないか」という大問題が持ち上がる。

グローバーとアースキンは見る者を確実に魅了する。

映画版の情熱的で、ばかげていて楽しい120分間を、脳内で無限に再生している熱狂的ファンも例外ではない。

カルチャー現象だった05年の映画をひとまず忘れることができれば、24年版のスミス夫妻は全く別物で、別の意味で特別だと分かるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業

ビジネス

米NY連銀総裁、インフレ鈍化を歓迎 「利下げには不

ビジネス

日本生命、米同業のコアブリッジに6000億円出資 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中