最新記事
メンタルヘルス

大坂なおみが語る「だから私は心の問題を訴えた」

NO COMMENT

2024年2月7日(水)15時54分
ベン・ローゼンバーグ(ジャーナリスト)

240213p42_ONM_02.jpg

20年の全米オープンでは4大大会で3度目の優勝 MATTHEW STOCKMAN/GETTY IMAGES

スポーツビジネスを扱うニュースサイトのスポルティコが開幕直前の5月25日に配信した記事によれば、なおみはスポンサー契約だけで過去12カ月に推定5000万ドルを獲得していた。

女性アスリートでは最高額。男性を加えても彼女の上にいたのはロジャー・フェデラー(テニス)、レブロン・ジェームズ(バスケットボール)、タイガー・ウッズ(ゴルフ)だけ。

それでもパリで5月26日の夜が更けるまで、彼女は特別に注目を浴びる存在ではなかった。

全てが変わったのは、その夜11時24分。なおみは今の気持ちをiPhoneのメモアプリに記し、ツイッター(現X)に投稿した。

今までも大きな大会が近づくとやってきたことだが、過去の投稿と違って今回はけんか腰とも言えるものだった。


みなさん。お元気ですか。

私がこのメッセージを書いているのは、全仏オープンの間は記者会見を受けないとお伝えするためです。

私はアスリートのメンタルヘルスへの配慮が足りないと感じることが、よくあります。

記者会見を見たり、参加したりするたびに、強く感じます。

会見では今まで何度も聞かれた質問や、自信を失わせるような質問をされることが多いのです。

私は、私のことを疑う人たちの前に身をさらしたくありません。

負けた後に会見場で泣き崩れるアスリートの映像を、たくさん目にしました。

みなさんも見たことがあるでしょう。

ただでさえ落ち込んでいる人をたたく場が、なぜ必要なのか分かりません。

記者会見に応じない理由は、大会に対する個人的な感情ではありません。

私が若い時から取材してくれている記者が何人かいて、その方たちの大半とは親しい関係にあります。

でも統括組織が「会見をしないなら罰金だ」と言い続け、組織にとって財産であるはずのアスリートのメンタルヘルスに無視を決め込むなら、もう私は笑うしかありません。

このことで高い罰金を科せられるでしょうが、それがメンタルヘルスに関するチャリティーに使われることを願っています。

ハグ&キッス✌🏿

なおみは自身の主張を裏付けるため、インスタグラムには宣言文に加えて過去の動画を2本アップした。

1つは、1994年に当時14歳だったビーナス・ウィリアムズのインタビューを父親のリチャードが遮っている動画。ABCニュースの記者が娘の不安をあおるような質問を繰り返すことが許せなかったのだ。

もう1本は、アメリカン・フットボールのマーショーン・リンチが2015年のスーパーボウル前の記者会見で、何を聞かれても「俺は罰金を科されないために、ここにいるんだ」と答えているものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中