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都心に現存する奇跡の建築、東京都庭園美術館の美

2022年6月29日(水)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載

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壁面全体にウォールナット材を用いた重厚感漂う1階の大広間。天井に配された40個の照明やアーチ状の開口などシンメトリーな配置はアール・デコ様式の特徴のひとつでもある。

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来客との会食に使用された1階の開放的な大食堂からは庭が眺められる。シャンデリアはルネ・ラリックによる『パイナップルとザクロ』。

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2階にある鳩彦王の書斎。1947年から7年間にわたり外相公邸、首相公邸として使用した吉田茂もこの書斎を愛していたと伝わる。家具と絨毯はアンリ・ラパンが手がけた。

贅を尽くした装飾の数々

おもに来客をもてなすための1階には、設計者のアンリ・ラパンをはじめ、ルネ・ラリックやマックス・アングラン、レイモン・シュブといった当時のフランスを代表する芸術家やデザイナーによる装飾が随所にある。また、宮内省内匠寮の技師による緻密な寄せ木張りやモザイクタイルの床、大理石製の荘厳な階段なども圧巻。フランスと日本、両国の芸術家、職人、技師が腕を振るった装飾が現代の人々をも魅了する。

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1階にある大食堂の暖炉上の壁画はアンリ・ラパン作。左右にイヴァン=レオン・ブランショによる植物模様の壁面装飾が施されるなど、"食"にまつわるモチーフが取り入れられている。

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2階の和風アール・デコの空間へと誘う建物中央に配された第一階段。手すりや腰壁などに白、茶、黒の3種類の大理石が使われている。

往時の華やかさを伝える試み

建物公開展では、応接セットや大食堂のテーブルセットなど、往時の雰囲気を再現した展示が行われ、優雅な暮らしぶりを伝えている。さらに通常の企画展開催時は展示品保護のため閉じられているカーテンが開放されている点も特筆される。館内に入る光を感じ、窓から庭園を眺めながら室内を歩くと、よりいっそう空間の魅力を味わえるだろう。また書斎に併設された書庫など、普段はあまり足を踏み入れることのできない部屋の特別公開も行われている。

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2階の書斎に併設された書庫に、2022年の建物公開展では入室できる。Photo: Yosuke Owashi

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芝庭や日本庭園が一望できる朝香宮夫妻専用のベランダ。国産大理石を用いた市松模様の床が目を引く。

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