最新記事
日本企業

サブカルの発信地「ヴィレヴァン」、気付いたらマズいことに ドンキに差を付けられた根本理由とは?

2024年2月20日(火)14時01分
谷頭和希(チェーンストア研究家・ライター) *東洋経済オンラインからの転載

ヴィレヴァンは「世界観」を大事にしてきた

まずは、ヴィレヴァンの店を訪れてみる。店内の通路はゴチャゴチャしていて、迷路のよう。うかうかしていると、さっき通った道に戻ってきてしまう。

本屋ではあるが、扱っているのは本に限らず、CDやDVD、あるいは雑貨に洋服、なんでもあり。それぞれの商品にはその商品の魅力を伝えるPOPが書かれ、そこにはちょっとおどけた商品の宣伝が書いてある。

ヴィレッジヴァンガード店内

この雰囲気に、ワクワクしていた読者も少なくないはず(筆者撮影)

ヴィレヴァンの店舗空間を見て思うのは、「世界観」がそこに形成されていることだ。実際、「ヴィレヴァンっぽい」といったら、私たちはなんとなくそのニュアンスを理解できる。ヴィレヴァンの成功のカギの一つが、このような独特な「世界」を空間的に作ったことにあると思う。

しかし、私は、このヴィレヴァンの世界観を演出する空間戦略にこそ、その不調の原因があると思っている。それを以下の2点から説明しよう。


①ヴィレヴァンを支える「サブカル」という言葉が曖昧になり、その空間も曖昧になった。
 
②「世界観」を強く訴求することと、消費者のニーズに齟齬がある。

ヴィレヴァンは、よく「サブカル」の聖地だといわれる。歴史的にいえば、メインカルチャーに対する傍流として「サブ」カルチャーといわれることが多く、ヴィレヴァンの創業者である菊地敬一も、ヴィレヴァンの創業にあたって「B級である矜持を持とう」というメモを書いていた。A級ではない、傍流としての「B級」を目指す姿勢がよく現れている。

ヴィレッジヴァンガードに迫った永江朗『菊地君の本屋』には、このような「B級」であるために客を満足させる定番商品リストが書いてある。ウィリアム・バロウズの著作集や片岡義男の本、ジャズに関連する本などがそこには書かれてある。ある程度、どのような顧客に向けて商品を揃えるのかというターゲティングが明確であったともいえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中