最新記事

経営

今すぐ辞めてほしい「モンスター社員」を解雇する方法。所要期間は? 注意点は?

2022年9月30日(金)18時50分
堀田陽平 ※経営ノウハウの泉より転載

モンスター社員(問題社員)を有効に解雇できるケース

裁判例では、職場秩序違反を理由として、事前の注意指導や懲戒処分などを経ずにいきなり解雇した場合には、容易に有効と認めない傾向にあります。よほど問題行動が重大なものでない限りは、事前の注意指導や懲戒処分を行うことなくいきなり解雇をすることは難しいと考えるべきでしょう。

一方で、解雇が有効となった裁判例もあります。上司への侮辱的な発言や時間外労働制限の従わないなどの複数の小さな問題行動が見られる従業員に対しなされた解雇についての裁判例です。上司の指示に従わない傾向が顕著であることや他の従業員への悪影響があること、そして、これまで4回にわたり、けん責処分を受けていたにもかかわらず、反省の態度がないこと等を理由に解雇が有効となりました(東京高等裁判所平成14年9月30日)。この裁判例では、これまでも複数回に亘って懲戒処分を行ってきたにもかかわらず、改善の傾向がないことが、解雇を有効とする理由となっています。

モンスター社員(問題社員)を解雇する具体的な流れ

上記の裁判例を踏まえると、モンスター社員を解雇する場合には、次のような流れを踏む必要があるといえるでしょう。

■ステップ1:モンスター社員(問題社員)の問題行動の証拠を収集

モンスター社員は、たとえ本当は問題行動を行っていても、「そんなことは知らない」と事実を否定することが多い傾向にあります。

そのため、まずはモンスター社員の問題行動の証拠を確保することが重要です。問題行動を行った形跡が残る写真や、そうした形跡が残らない場合であっても、問題行動が示されているメール、従業員からの報告文書など、できるだけ形に残るものを集めておきましょう。

■ステップ2:注意指導、懲戒処分

モンスター社員が問題行動を起こした場合、即解雇を行っても、"解雇権の濫用"として無効となる可能性が高いです。そのため、事前に注意指導や懲戒処分を行い、問題行動の改善を促した記録を残しておくことがとても重要です。

注意指導は行っているものの口頭にとどまっているケースがよく見受けられますが、証拠の観点からは、やはり書面で残しておくべきです。書面で注意指導を行うことは、本人に対して具体的に問題である行動を示し、明確に認識させることができるため、解雇に至る前の改善を促す効果もあるといえるでしょう。

■ステップ3:弁明の機会の付与

モンスター社員の解雇は、"普通解雇"ではなく"懲戒解雇"としてなされることが多いです(懲戒解雇に加えて予備的に普通解雇をすることもあります)。懲戒解雇のような重い懲戒処分を行う場合には、事前に問題行動を示し、モンスター社員に弁明の機会を与えることが適当です。弁明の機会を与えることで、会社の真剣な対応を示すことにもなり、モンスター社員の問題行動が改善したり、自ら退職を申し出ることも考えられます。

(参考記事)業績悪化で整理解雇を考えざるを得ない...その前に検討すべき具体的対策を紹介

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルの格付け据え置き、見通しネガティブ=ムー

ビジネス

韓国、不動産部門の再編加速へ 事業の収益性やリスク

ビジネス

暗号資産団体がPAC発足、米連邦議会選の候補支援 

ビジネス

米フォード、2027年にスペインで新型EVの生産開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中