最新記事

資産運用

ビットコインで年金積み立て? プロが資産形成に仮想通貨を組み込む納得の理由

INVESTING IN CRYPTO

2022年6月9日(木)18時43分
ケリー・アン・レンズリ

専門家によれば、ビットコインその他の仮想通貨の不安定な性質は、その本質的な価値ではなく、他の人が信じる価値によって価格が大きく左右されることに由来する。「(仮想通貨での)リターンは、将来の買い手が自分の購入価格よりも高い価格を支払うだろうという希望的観測にのみ基づいている」と言うのは、ビスタ・キャピタル・パートナーズのロブ・グリーンマンだ。

全ての投資には希望の要素が含まれるが、株や債券、不動産などでは利息や配当などでも稼げるし、現物や政府の裏付けもある。

一方、歴史の浅い仮想通貨の場合は、経済環境の変化による値動きを予測するのに必要な過去データの蓄積が少ない。金利が上昇し、インフレが進行している現在の状況も、仮想通貨にとっては未体験ゾーンだ。

だから仮想通貨に投資するなら、瞬時に多額の資金を失う可能性もあることを覚悟するべきだ。専門家は仮想通貨への投資を「投機」として扱うよう注意を促している。経済的にも精神的にも、「失ってもいい額」だけを投資するのがいい。

資産運用の多様化には有効

前出のエデルマンによれば、投資顧問会社の半数近くは現にビットコインを保有している。ただし、高値で売り抜けて差益を稼ごうというのではない。むしろ、変動の激しい仮想通貨をポートフォリオに組み込むことが全体のリスク軽減に役立つと考えているようだ。仮想通貨の歴史はまだ短いが、その値動きは株や債券その他の資産と連動していない。

だから、運用先の分散という点では有効なツールかもしれない。「分散投資の一部に組み込めばリターンを増やし、リスクを下げることができる」と言うのは、アドバンス・ピリオドのジム・シャガワット。タイミングがよければリターンが劇的に増える可能性もあるという。

株式が60%、債券が40%の典型的な年金プランの場合、1年の平均リターンは7%程度だ。しかし株式を59%にして、1%を仮想通貨などに回したらどうか。「ビットコインが1500%も上昇したときのような大きな波が来れば、年間のトータルリターンは22%になる」とシャガワットは言う。「仮にビットコインの価値がゼロになっても、株・債券・仮想通貨の比率が59対40対1なら、まだ6%のリターンが残る」

401Kなどの年金プランを通じたデジタル資産への投資は、仮想通貨固有の変動性を平準化する方法としても有効とされる。

また高値の仮想通貨に投資して、次の日に暴落するのが不安なら、定期的に少額を購入して変動リスクを下げる方法もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中