最新記事

クリエイティビティー

創造性は誰もが持つ力...発揮するために必要な「変異×適応」のプロセスとは

2021年12月29日(水)17時30分
flier編集部

座右の書は『種の起源』

── 「モノに対する愛がある」と語っていらっしゃいましたが、建築、デザインに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。

父が設計士だったため、建築志向が何となくプリインストールされていた面はありますが、幼いころから今の職業を好きになる「素養」はあったように思います。粗大ゴミの壊れたテレビやルームランナーを分解したり、修理したりしていましたね。まさに「進化思考」でいうところの「解剖」です(笑)。下の図に見られるような、四つの軸による観察が進化思考の半分を構成する「適応」です。解剖はその中の一つですね。

211229fl_tck03.jpg

NOSIGNER提供

── 少年時代からモノやその構造への好奇心がたくましかったのですね。以前、「進化思考に考え方が似ている」書として『テクニウム』を挙げられていましたが、今までで最も感銘を受けた書籍をお教えいただけますか。

やはり、『種の起源』ですね。『進化思考』と切っても切れない関係にある書ですが、三重の意味で素晴らしい本です。

第一に、その理論の影響力。本一冊で世の中を変えた、社会通念や常識を一変させました。

第二に、冒険の書としての側面です。ダーウィンがビーグル号に乗り込んで世界を巡る。その途次における生物との出会いや発見が大航海のナラティブを想起させ、想像力を掻き立てられます。

第三には、それまでの常識や皆がそうだと思い込み、アンタッチャブルになっている部分に対し、果敢に挑んでいった姿勢です。知ってしまった「王様の耳はロバの耳」という事実を、きちんと「ロバの耳だ」と喧伝する勇気、挑戦の大切さを教えてもらった気がします。

211229fl_tck05.jpg

『種の起源(上)』
 著者:ダーウィン、渡辺政隆(訳)
 出版社:光文社
 flierで要約を読む

211229fl_tck06.jpg

『テクニウム』
 著者:ケヴィン・ケリー、服部桂(訳)
 出版社:みすず書房
 flierで要約を読む

── 山本七平賞受賞の贈呈式で「デザインを極めんとし、再構築した創造性教育の社会実装を目指す」と述べられていました。あらためて目指しているゴール、理想形をお教えください。

教育の本質を問い直したいと本気で考えて、日々進化思考をベースとした新しい創造性教育に取り組んでいます。現在の学校教育はいつの間にか職業訓練のようになり、答えのある問題に取り組むことだけが評価されてしまっています。社会は答えのない問題ばかりなので、とても残念です。まだ答えのない問いに挑むこと、失敗にさえ価値があることを学ぶ機会を用意しなければなりません。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中