最新記事

日本企業

東芝社長交代劇、CVC提案前に車谷氏の進退問う動き お家騒動の裏側は?

2021年4月15日(木)08時41分

英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収の動きがある中で、東芝の車谷暢昭社長が辞任した。事情に詳しい複数の関係筋によると、車谷氏への信任が失われてきたことを受け、同氏の進退問題が先に社内で浮上、それに対して車谷氏が「報告」したのがCVCによる買収提案だった。写真は記者会見での車谷氏。2018年撮影。(2021年 ロイター/Issei Kato )

英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収の動きがある中で、東芝の車谷暢昭社長が辞任した。事情に詳しい複数の関係筋によると、車谷氏への信任が失われてきたことを受け、同氏の進退問題が先に社内で浮上、それに対して車谷氏が「報告」したのがCVCによる買収提案だった。

東芝がCVCによる買収の「初期提案」を受領したと発表する前日の6日午後、車谷氏と取締役会議長で指名委員会委員長の永山治氏らが面談した。株主や社内での車谷氏への信任が低下していることを踏まえ、永山氏はその場で、定時株主総会を前に、指名委員会で車谷氏の進退を協議する旨を伝えた。

車谷氏が「返す刀」で報告したのが、CVCによる買収の初期提案だったという。CVCは今後の正式提案を経て東芝と条件交渉を始め、日本の当局を含めて合意できれば株式公開買い付け(TOB)を通じて非公開化を進めるという話だ。

非公開化すればアクティビストとの対立は解消に向かう。永山氏は14日の会見で、CVCからの初期提案について「(初期提案当時の)マネジメント維持と書いてある」と述べた。車谷氏は今年の株主総会での再任が難しくなりつつあったが、CVCの買収が実現した場合には体制を温存するとの意向がにおわされていた。

進退をめぐる協議は、CVCからの初期提案を受けていったん棚上げになったかに見えたが、13日には翌14日に臨時取締役会を開いて協議する方向へと急展開した。その13日の深夜、車谷氏が辞任の意向を固めたことが伝わった。

車谷氏は元三井住友銀行副頭取で、CVC日本法人の会長兼共同代表を経て、2018年に東芝の会長兼CEOに就任、2020年に社長に就いた。企業統治(コーポレートガバナンス)や資本政策を巡って大株主のアクティビストと意見が対立し、昨年の定時株主総会では社長再任への賛成割合は57.2%に低下していた。

東芝は、経営の監督と執行を分ける指名委員会等設置会社の統治形態で、指名委員会が取締役の選解任議案を決める。永山氏は指名委員会の委員長も務めている。

同社には、取締役を除く執行役や統括責任者、事業部長などの上級管理職が無記名で信任投票する執行役社長評価制度がある。指名委員会が社長再任指名を検討する際の参考情報としており、関係筋によれば昨年度の調査で「不信任」が過半を超えた。内外の不信任を踏まえて、再任は難しいと指名委は判断したようだ。

永山氏は14日の会見で「解職という話はない。本日、本人から辞任を申し出たということに尽きる」と強調した。取締役会での議論の前に、申し出があったという。 

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア新国防相に起用のベロウソフ氏、兵士のケア改善

ワールド

極右AfDの「潜在的過激派」分類は相当、独高裁が下

ワールド

フィリピン、南シナ海で警備強化へ 中国の人工島建設

ワールド

リオ・ティント、無人運転の鉄鉱石列車が衝突・脱線 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中