最新記事

環境

「選挙戦での蜜月は終わった」 環境団体、バイデンに早くも圧力

2020年12月13日(日)12時52分

バイデン次期米大統領と環境団体の「蜜月関係」に終止符が打たれようとしている。写真は2019年6月、ニューハンプシャー州の太陽光発電施設を訪問するバイデン氏(2020年 ロイター/Brian Snyder)

バイデン次期米大統領と環境団体の「蜜月関係」に終止符が打たれようとしている。大統領選でこうした団体は資金や人員を投じてバイデン氏を応援してきたが、勝利が確実になった今、同氏が掲げてきた気候変動に関する政策公約の実現を迫る運動を早くも開始し始めたからだ。

この動きは、環境問題を軽視し、米国の化石燃料産業の利益を最大化する政策を推進してきたトランプ政権の下で蚊帳の外に置かれていた環境団体が、再び政治的影響力を行使できる状態になったことを物語る。

実際、バイデン氏が化石燃料産業と関係のある人物を政権の主要ポストに起用すると表明するや否や、一部の環境団体が早速かみついた。バイデン氏は迅速な環境政策の実施を求める圧力に今後も常にさらされそうで、その重圧はオバマ前政権時代よりも大きくなる可能性がある。

国際環境NGO、350オルグ傘下で化石燃料産業に反対するフォッシル・フリー・メディアのディレクター、ジェイミー・ヘン氏は「当ネットワークがバイデン氏を次期大統領と宣言した段階で、ハネムーンは終わった。(環境政策実行を促す)圧力を味方にするか、敵にするかはバイデン氏次第だ」と強調した。

バイデン氏も政権移行準備を進める中で、そうした環境団体の役回りは承知している。先週のCNNテレビでは、環境団体からの要望は日増しに強まっているとした上で「それが彼らの仕事だ」と語った。

ただ、環境保護NGO、エンバイロメンタル・ディフェンス・アクション・ファンドの幹部でかつてオバマ前大統領の経済顧問を務めたナット・コヘイン氏は、環境団体が次期大統領に向ける視線は、環境問題で対応が遅いと批判され続けたオバマ氏の時代より、さらに厳しくなる恐れがあると警告する。

コヘイン氏によると、その理由は森林火災や巨大ハリケーンといった近年の気候変動に起因するとみられる災害多発を受け、より攻撃的な新世代の環境活動家が相次いで誕生しているからだ。「オバマ前政権当時の米国の環境運動に現在ほど幅広い声は存在せず、政策課題として気候変動の優先順位は、ここまで高くなかった」という。

それでもオバマ前政権は定期的に環境団体の代表と面会し、彼らの意見を踏まえて新たな政策や規制を導入した。この慣例は2017年、トランプ氏が大統領に就任したとたんに姿を消す。ロイターがトランプ政権1年目の環境保護局(EPA)の公式日程を確認したところでは、EPA長官と産業界代表との会談回数が環境団体の25倍に達していた。

具体的な要求

米連邦政府のデータを見ると、リーグ・オブ・コンサーベーション・ボーターズ(LCV)、シエラクラブ、EDFアクション、サンライズPACなど環境団体が組織した各政治資金団体は、今年の連邦選挙で計150万ドル強を支出し、その大半がバイデン氏や民主党議員のために投じられたことが分かる。

その直接的な見返りというわけでもないだろうが、バイデン氏が政権移行を進めている今の段階で既に、各団体は「約束」は果たしてもらうと明言している。約束とは、バイデン氏が気候変動に関して強力な行政措置を講じ、あらゆる政策で対応すると表明したことだ。

例えば、若者が中心のサンライズ・ムーブメントは、バイデン氏が大統領上級顧問にセドリック・リッチモンド下院議員を登用する方針を打ち出したことをやり玉に挙げた。リッチモンド氏が石油業界から献金を受け取っていた点を問題視した上で、この人事を「裏切り行為」だと糾弾した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、ショイグ国防相を交代 後任にベロウ

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中