最新記事

ネットビジネス

年収30億円のカリスマインフルエンサー「口紅王子」はなぜ儲かる? 資生堂、カルビーなどもオファー殺到する中国の「ライブコマース」

2020年11月19日(木)15時00分
中島 恵(フリージャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

中国最大のネット通販セールとして知られる「独身の日」。今年はライブコマースという新しい販売チャネルを利用した人が多かったという。写真は浙江省の杭州で撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

<中国最大のネット通販セールとして知られる「独身の日」。今年の流通額は前年比85.6%増と大幅な伸びを記録した。その背景にはインフルエンサーが動画で商品をPRする「ライブコマース」という手法があるという。ジャーナリストの中島恵氏が解説する---->

過去最高を記録した「独身の日」、何が違った?

11月11日深夜0時、中国最大のネット通販セールであり、消費の一大イベントとして知られる「独身の日」(双11、ダブルイレブン)が終了した。最大手であるアリババ集団の流通額は過去最高の4982億元(約7兆9000億円)と、前年比85.6%増となる大幅な伸びを記録。ネット通販第2位の京東集団(JDドットコム)も2715億元(約4兆2700億円)と前年を30%以上も上回った。

世界89カ国・地域の25万以上のブランドの商品をめぐり、約8億人の消費者と500万以上の企業が参加。最終的にアリババと京東の2社だけで日本円にして12兆円という驚異の流通額をたたき出した。

今年は例年と大きく異なる点がいくつかあった。ひとつは実施期間だ。

2009年から始まった同イベントはこれまでずっと11月11日の1日のみだったが、今年は販売期間が11月1~3日と11日の計4日間に設定されたことだ。これには例年、殺人的な忙しさとなる宅配業者の出荷ピークを分散させるという狙いがあったようだが、購入の予約と販売の期間が長くなったことが流通額の増加に結びついた。

2つ目は、やはり新型コロナウイルスの影響だ。今年は海外旅行に行けず、お金をあまり使わなかった人々が、例年以上に多くの買い物をしたことだ。

主に売れたものは、デジタル製品、家電、化粧品、衣料品、靴、バッグ、食品、健康関連、ベビー・マタニティ用品、日用雑貨などで、アイテム的には例年とほとんど変わらなかったのだが、中には富裕層が億単位の不動産や億単位の宝飾品、プラダ、カルティエなどの高級ブランド品、自動車なども購入したという。もはや中国人にとってネット通販は日常の一部であり、ネット通販で買えないものはない、ということを改めて示した。

実演販売が見られる「ライブコマース」が人気

しかし、何といっても、今年最大の特徴といえば、やはりライブコマースという新しい販売チャネルを利用した人が多かったという点だろう。ライブコマースは、簡単にいえば「ネット上で、生放送で行われる実演販売」。「ネット通販と動画の融合」や「ネット版のテレビショッピング」と呼ぶ人もいる。

中国では2018年ごろから流行はやり始めたものだが、これまで主流の販売チャネルにはなっていなかった。だが、今年は新型コロナの影響で、中国でも1月下旬から4月下旬くらいまで、人々はほとんど外出することができなかった。その際、家の中でスマホを見ている時間が非常に長く、スマホ上の生中継で、テレビのように「ながら視聴」できるライブコマースが、「まるでその現場にいるような感覚で買い物ができる」「説明が分かりやすくて、おもしろい」という理由で、急速に消費者の注目を集めるようになったのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「状況は正しい方向」 利

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中