最新記事

投資

混迷の英「ブレグジット」総選挙、予測はAIで 世論調査頼みを見直し

2019年12月9日(月)15時45分

英国で12月12日に実施される総選挙の結果は、金融投資家にとって、巨額の利益/損失の分岐点になりかねない。彼らは今、利用できる限りの予測ツールを揃えようとしている。写真はロンドンで10月撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)

問い:英国議会の解散総選挙の結果をどうやって予測するか。ただし、非常に多くの世論調査が間違っており、有権者の半数は投票先を決めておらず、誰が勝つかではなく、どれくらいの差で勝つかが重要な要因であるとする。

答え:分からない。

英国で12月12日に実施される総選挙の結果は、金融投資家にとって、巨額の利益/損失の分岐点になりかねない。彼らは今、自分で何とか答えを出そうとして、人工知能による分析から民間の世論調査、さらにはブックメーカーの予想手法まで、利用できる限りの予測ツールを揃えようとしている。

もはや世論調査会社は頼りにならない―。これほど予測困難で、しかも金融投資にとって決定的に重要な選挙を前にして、ファンドマネジャーらはこう話す。世論調査会社が過去2回の英国の選挙で予測を失敗し、ブレグジットやトランプ氏当選についても大失策を演じたからだ。

「世論調査は実像をとらえていない」

ロンドンを本拠とするユーライゾンSLJでマクロ系ヘッジファンド・マネジャーを務めるスティーブン・ジェン氏は、「参考にするデータの85%はかつて世論調査の結果だったが、今では恐らく30%だ」と語る。「世界があまりに複雑になってしまい、かつては標準的な指標だった世論調査は、もはや実像を捉えていない」。

ロイターでは、アビバ、リーガル・アンド・ジェネラル、NNインベストメント・パートナーズ、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、M&Gインベストメンツなど、20社を超える大口投資家にインタビューを行った。

インタビューでは、大半の投資家がAIベースの予測ツールを採用する考えを示した。選挙情勢を正確にとらえるには、ニュース報道やソーシャルメディア、ウェブ上での関心度、世論調査、ブックメーカーの予想オッズなどをさまざまに分析する必要があるからだ。

ブレグジット問題によって、伝統的な政治的色分けは揺らいでいる。ボリス・ジョンソン首相が率いる与党保守党は迅速な欧州連合(EU)離脱を主張し、主要野党である労働党は国民投票のやり直しを公約、他の党はEU残留を掲げている。

ジョンソン氏にとって、他党よりも多くの議席を得るだけでは十分ではないだろう。ブレグジット実現を確保するためには、議会での過半数が必要だ。それ以外の結果になれば、EU加盟継続をめぐる2回目の国民投票につながる可能性が高い。

重大な岐路につながる判断を迫られている中、最近の調査では、有権者の半分が態度未決定の「浮動票」であると考えられている。

BNPパリバで株式デリバティブ戦略グローバルヘッドを務めるエドワード・シング氏は、「率直に言って今回は、記憶にある限りで、圧倒的に最も予測困難な選挙だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中