最新記事

都市

「グーグル市」の住み心地

理想の都市作りと統治を目指すグーグルが世界を救う

2015年4月21日(火)14時34分
マーク・ラッター

ペイジの夢 社員のための自転車が完備されたグーグルのような理想のコミュニティを作りたい LUCY NICHOLSON/REUTERS

 グーグルが運営する民営都市があったら住みたいだろうか?

 グーグルが都市を作って行政を行うというのは、実はそれほど突飛なアイデアではない。グーグルは以前から都市建設への関心を口にしており、CEOのラリー・ペイジは自ら社会制度の実験ができる自治エリアを作りたがっている。

 こうしたアイデアは、世界を変える可能性を秘めている。制度の変更が経済を活性化することもあるし、有能で効率的な統治機関は、成長の果実を汚職で無駄にすることなく有効に使うだろう。

 民営都市というアイデアは通常、陰鬱な未来という恐怖のイメージを呼び起こす。邪悪な巨大企業が大衆を容赦なく搾取する図だ。こうした企業支配に対抗する最後の砦が、政府だと考えられている。だが、想像上の巨大企業をグーグルに置き換えてみれば見方も変わる。恐怖より、効率的な統治の恩恵に期待する気持が強くなる。

 グーグルのような会社は長期的にモノを考える。短期的な利益のために長年培ったブランドイメージを犠牲にはしない。実務的でもある。現状の枠内でモノを考えず、住民を引き付けるために最良の政策を採用するだろう。最後に、グーグルなら規模も十分に大きい。金目当ての輩に脅されて不正に手を染めることもないだろう。

 こうした恩恵にも関わらず、懐疑的な人も多いだろう。欧米に暮らす人々は概してすぐれた自治体で良い暮らしをしている場合が多い。グーグルに都市の運営を任せることによる恩恵は限定的だ。

 グーグルが作る民営都市は、発展途上国でこそ意味がある。貧しい国が貧しいのは、政府が国民の資産を略奪するからだ。こうした政府は、側近や家族に企業を独占させて、その他すべての者の犠牲の上に自らの富を築く。こうした環境で得をするのは一般にエリート層で、大衆は貧困に追いやられる。

 こうした国にとって、グーグルは希望となりうる。世界で高い知名度を誇るグーグルは、途上国政府と交渉し、民営都市を運営するための自治区を手に入れることができるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が短距離弾道ミサイル発射、日本のEEZ内への

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ビジネス

中国平安保険、HSBC株の保有継続へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中