最新記事

人事評価

ヤフーが「ダメ社員」切りに着手

優秀でも「落ちこぼれ」にされかねないスタックシステムは何のため?

2013年11月26日(火)15時17分
トーマス・ハレック

リストラの指標 ヤフーのメイヤーCEOは人切りを進める構え Stephen Lam-Reuters

 マイクロソフト(MS)が批判の多い人事評価制度「スタックランキング」の廃止に動きだした。管理職が一定の割合の部下を「落ちこぼれ」に分類しなければならないシステムだ。

 一方、ヤフーはこの評価方法で社員をふるい分け、600人程度をリストラする計画らしい。

 MSの最新版のスタックランキング制度では、管理職が部下に5段階の評価をつける(1が最高)。統計的に1から5までの比率を設定して配分する相対評価だ。つまり設定した比率を満たすため、それなりに頑張った部下にも最低の評価をつけなければならない場合が出てくる。

 MSはこのシステムを賞与の査定のほか、リストラにも使っていた。詳細は明らかではないが、2回連続で最低評価になると解雇されるようだ(ヤフーも同様の方式だろう)。

 MSの人事部門を率いるリサ・ブラメルは先週、社員宛てのメールで人事考課の新方針を明らかにした。個人の実績だけでなく、チーム全体への貢献を評価すること、管理職から部下に適切なフィードバックを与えるなど社員の能力の育成・開発にも力を入れること、賞与については一律の査定をやめ、各部門の管理職が予算の範囲内で部下たちに適切に配分できるようにすること......などだ。

 そもそもMSのスティーブ・バルマーCEOがスタックランキング制度を導入したのは、ゼネラル・エレクトリック(GE)で成功した制度を参考にしたからだ。この制度は大所帯になった企業のスリム化には有効な方式とされる。MSは既に目標レベルまで人員を削減できたが、ヤフーのマリッサ・メイヤーCEOはこれから本格的に大ナタを振るう構えのようだ。

 ヤフーの管理職はメディアに宛てた匿名のメールで「決められた比率に合わせるために、頑張っている部下を最低ランクにしなければならないのは、非常につらい」と訴えている。

 GEのジャック・ウェルチ前CEOは公正な論功行賞が可能な評価方法としてこのシステムを導入したが、強引な「足切り」になると批判する声も多い。人事コンサルタントのディック・グロウトによると、導入した企業も短期間で廃止するケースがほとんどとか。批判派に言わせれば、縁の下の力持ち的な社員が切り捨てられかねず、社員の士気を低下させる悪しき制度だ。

[2013年11月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 8

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 9

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中