最新記事

米金融

デリバティブ規制法案は穴だらけ?

2009年10月21日(水)16時09分
マイケル・ハーシュ(ビジネス担当)

 ウォール街の金融大手は、一時厳しく批判された高額ボーナスを再支給し始めた。復活の兆しはほかにもある。金融機関の主要収入源の1つであるデリバティブ(金融派生商品)を規制から遠ざけるロビー活動を水面下で進めている。

 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に代表されるような規制外のデリバティブは、金融危機を引き起こす要因にもなった。非難の嵐をやり過ごすため、銀行業界が関与しない「デリバティブ・エンドユーザー連盟」という組織が新設された。

 同連盟の活動目的は、複雑なデリバティブの運用を抑えること。後ろ盾となっているのは、商工会議所や全米製造業者協会などだ。

 彼らのロビー活動がある程度実を結び、10月15日には米下院金融委員会が、店頭(OTC)デリバティブ取引規制を強化する法案を承認した。この法案によって、数多くのデリバティブ取引が規制下でオープンに行われるようになると、同委員会のバーニー・フランク委員長は語っている。

 しかし商品先物取引委員会(CFTC)のゲーリー・ゲンスラー委員長ら批判派に言わせれば、この法案は抜け穴が多く、ヘッジファンドやプライベートエクイティ(未公開株)投資会社などの金融機関は規制の網をかいくぐれるという。

 フランクは同法案の細部の厳格化を表明したが、金融業界に牛耳られている民間の取引所では、CFTCの監督外で取引の大半が行われる恐れがあるとの懸念もある。フランクの広報担当も、法案は今後も改善が施されるだろうと、慎重なコメントを出している。

[2009年10月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ダウ平均、一時初の4万ドル突破 好決算や利下げ観測

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中