最新記事

フェースブックの「ゴールドマン価値」は本物か

フェースブック
過去か未来か

打倒グーグルの最有力候補は
会員5億人の「お友達帝国」

2011.01.06

ニューストピックス

フェースブックの「ゴールドマン価値」は本物か

ソーシャルメディア企業の価値高騰と15年前のドットコム・バブルとの不気味な類似点

2011年1月6日(木)18時40分
ローレン・ブルーム

リアルな価値は フェースブックのバーチャルな世界には世界の12人に1人が参加しているが Thierry Roge-Reuters

 最近、何かとメディアを騒がせている世界最大のSNS、フェースブック。同社創業の舞台裏を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』はアカデミー賞レースの注目株だし、創業者のマーク・ザッカーバーグは昨年末、タイム誌で「2010年の顔」に選ばれた。

 さらに、金融大手のゴールドマン・サックスとロシアの投資会社デジタル・スカイ・テクノロジーズが同社に5億ドルを出資。おかげでフェースブックの時価総額は、推定500億ドルに膨れ上がった。

 だが、本当にそんな価値があるのだろうか。

 もしも500億ドルという数字が正しいのなら、フェースブックにはヤフーやeベイ、タイム・ワーナー以上の価値があり、アマゾン・ドットコムやグーグルといったネット界の巨人を猛追していることになる。

 フェースブックの企業価値は何に基づいているのだろう。時価総額700億ドルのディズニーに匹敵するとの声もあるが、ディズニーにはテーマパークにホテル、人気キャラクター、膨大な数のアニメーション映画など目に見える現物資産があり、それが企業価値を支えている。

 一方、フェースブックの資産は、世界の12人に1人がつながっているとタイム誌がもちあげたバーチャルなネットワーク。ただしウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、同社は2カ所のデータセンターに投じた7億ドルを含む巨額のインフラ整備コストをかかえている。しかも、財務状況を開示していない。

プライバシーを売るモデルは持続可能か

 フェースブックやツイッターのようなソーシャルメディアの企業価値が突然、跳ね上がっている現状は、15年ほど前に「ドットコム・バブル」を生んだネットビジネスの台頭と不気味なほど似通っている。

 当時、インターネットの普及状況は今とは雲泥の差で、形のある本社オフィスをもたない新興企業に個人情報やクレジットカードの情報を開示することに、多くの人が不安を感じていた。それでも、ネットの潜在力に目をつけた先駆者たちがネットビジネスを次々に立ち上げ、投資家の後押しを受けて雑草のように急成長した。

 当時生まれた企業のなかには、グーグルやアマゾン・ドットコムのように今も存在感と企業価値を保ち続けるケースもある。だが、ジオ・シティーズやフリーインターネット・ドットコムをはじめとするその他大勢の企業は、収益が上がらないことが明らかになった時点で早々に価値を失った。ドットコム・バブルが崩壊する前に売り抜けた投資家は大儲けしたが、タイミングを逸した者は大損を出した。

 フェースブックの巨大ネットワークの本当の価値はどの程度なのか。ポテンシャルが高いのは明白だ。これほど多くの人々が(バーチャルな)一カ所に集い、個人情報を明かしているのだから、ターゲット広告にとってはまたとない格好の舞台となりえる。

 ただし、それはユーザーが買い物のためにフェースブックを利用している場合の話。eベイやアマゾンといったショッピングサイトがユーザーにある商品を提案するのは、その人が過去に類似商品に興味を示したことがあるからだ。一方、人々がフェースブックに登録する目的はさまざまだ。旧友に連絡を取るため、写真をシェアするため、誰かと友達になるため、自分についてエンドレスに語るため──。広告が割り込んでくることを彼らが歓迎するとは限らない。

 フェースブックがユーザーのネット閲覧状況を広告主に開示できるかどうかも、定かではない。ネット上でのプライバシーという社会問題の一部として、フェースブックの個人情報保護の不十分さに対する不満が複数の国で噴出している。

 12月には米連邦取引委員会(FTC)が、フェースブックのユーザーが広告主のネット閲覧情報へのアクセスをブロックできるという規制を提案した。この規制が実施され、フェースブックのユーザーに広く普及すれば、ターゲット広告のプラットフォームとしての同社の価値には計り知れないダメージとなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円安、輸入価格上昇通じて実質所得下げる影響=植田日

ビジネス

原油価格や為替の今後の動きを注視と植田日銀総裁、実

ビジネス

午前の日経平均は反発、前日安の反動 個別物色が活発

ワールド

タイ首相、大麻を年内に規制薬物指定する方針表明 解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中