コラム

弾劾訴追でもトランプ再選は可能性大、米民主党ではあの人物が立候補へ?

2019年12月27日(金)11時15分

KEVIN LAMARQUE-REUTERS

<無能で腐敗したトランプに再選の可能性が高まっているのには、2つの理由がある。そして12月、米民主党候補として世論調査でバイデンを上回る支持率を得た人物がいた――。本誌年末合併号「ISSUES 2020」特集より>

弾劾訴追を受けたアメリカ史上3人目の大統領になったというのに、ドナルド・トランプの再選の可能性が急上昇している。トランプが相手だと、理屈も政治力学も通じない。いまブックメーカーは、トランプが2期を務め上げる連続で4人目の大統領となる確率を50%近いと見積もっている。
2019123120200107issue_cover200.jpg
普通ならば考えにくい話だ。トランプは大きな過ちを犯している。ただ無能というだけではなく、歴代大統領には並ぶ者のいない私利私欲だけの腐敗した人物であることも露呈した。それでも今日選挙が行われたら、トランプはおそらく勝つだろう。

トランプ再選の可能性が高いとみる根拠は、2つ挙げられる。第1にアメリカ経済が好調であることだ。株式市場は上昇を続け、失業率は低下を続け、消費は増え続けている。高くあるべき指標は高く、低くあるべき指標は低い。

景気拡大期に行われた直近の12回の大統領選では、現職大統領が常に2期目を目指し、常に勝利を収めている。経済がこのまま好調を続ければ、民主党がトランプを退けることは極めて難しい。

トランプ再選の可能性を支持する第2の根拠は、民主党がトランプに優る選択肢を提示できていないことだ。

いま民主党の大統領候補指名争いの先頭集団には、4人の有力候補がいる。ジョー・バイデン前副大統領は全米の支持率調査で首位を維持しているが、77歳と高齢であることの深刻な弊害を露呈している。選挙活動で訪れている州の名を頻繁に間違えたり、討論の最中にとりとめのない発言をしたり......という具合だ。

magSR191227issues_trump-2.jpg

高齢の弊害が見えるバイデン BRENDAN MCDERMID-REUTERS

最近、アイオワ州での集会でバイデンの危うさを示す出来事が起きた。息子がウクライナで高給の仕事に就くためにバイデンは何をしたのかと質問した出席者を、バイデンはつい「デブ」と呼んでしまい、腕立て伏せで勝負しようと持ち掛けた。

アメリカ人は前任者とは反対のタイプを大統領に選びがちだ。このところバイデンは、トランプに似てきている。

トランプと真逆の候補を挙げると、予備選が行われる最初の2州で支持率首位のピート・ブーティジェッジがいる。年齢は37歳とトランプの半分で、7カ国語を話す現代で最も優秀な候補といわれるインディアナ州サウスベンド市長だが、彼もつまずき始めた。

民主党の特にリベラル派が、ブーティジェッジの弱点に切り込み始めているのだ。アフリカ系の有権者に人気がなく、20代のときに大手経営コンサルティング会社に勤務し、裕福な投資家たちから献金を受けているといったことがやり玉に挙げられている。

magSR191227issues_trump-3.jpg

ブーティジェッジも人気に陰り BRENDAN MCDERMID-REUTERS

【参考記事】中国「皇帝」習近平は盤石ではない、保守派の離反が始まった

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 6

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 9

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story