コラム

トランプ再選を阻むのは誰? 混戦の民主党レースを読む

2019年02月02日(土)15時10分

昨年11月の中間選挙で敗れてもオロークへの待望論は消えない Chip Somodevilla/GETTY IMAGES

<2020年米大統領選の民主党レースは本命不在の大混戦――抜け出すのは若きカリスマ政治家か、それとも......>

ついにこの日がやって来た。私と同い年の友人がアメリカ大統領選への出馬を正式表明したのだ。友人の名はピート・ブーティジェッジ(37)。これまでに2020年大統領選の民主党候補者指名レースに名乗りを上げている中では最年少だ。

文句なしの秀才だが、現状はインディアナ州サウスベンドという人口10万人の都市の市長でしかない。正直なところ、指名を獲得できる可能性は乏しい。

彼の出馬が浮き彫りにしたのは、民主党が思想、人種、地域、性的指向、年齢などさまざまな要素で分断されていること。そして、次期大統領選の民主党予備選が本命不在の大混戦の様相を呈しつつあることだ。

もし、昨年11月に史上最年少で下院議員に当選したばかりのアレクサンドリア・オカシオコルテス(29)が立候補できるのなら、少なくとも序盤戦はやすやすと支持率トップに立てるだろう(大統領選の被選挙権は35歳以上)。それくらい、混戦ムードが強まっている。

民主党内に、トランプの再選を阻止できる人物はいるのか。以下、現時点で出馬表明済みの主な顔触れを見てみよう。

まず、エリザベス・ウォーレン上院議員(69)。富裕層が不当に経済的恩恵を得ている状況を改めると約束するだろう。

ヒラリー再出馬の現実味

問題は、ハーバード大学法科大学院元教授というエリートで、トランプ大統領にとって最もたたきやすいタイプだということだ。彼女が民主党の大統領候補に選ばれた場合、トランプに勝てる確率は30%程度だろう。

元検事で上院議員のカマラ・ハリス(54)は、上院司法委員会の論戦で舌鋒鋭く共和党議員をやり込めて脚光を浴びた。父親はジャマイカ人、母親はインド人。彼女がトランプに勝つ確率は60%。

キルステン・ジルブランド上院議員(52)は、ヒラリー・クリントンをコピーしたようなリベラル派女性政治家に見えるかもしれない。しかし、彼女ほどの二枚舌政治家は珍しい。下院議員時代はもっと保守的な立場を取り、反移民的な主張もしていた。予備選の滑り出しに成功したとしても、主張の一貫性の無さや無定見ぶりを批判されて失速するはず。トランプに勝てる確率は10%止まりだろう。

バーニー・サンダース上院議員(77)は、予備選の序盤では支持を集めそうだが、サンダースが参戦すれば16年同様に民主党内の対立が激化し、再びトランプを利する結果を招く。トランプに勝てる確率は20%。

まだ正式に出馬表明していない人物の中では、ベト・オローク元下院議員(46)への待望論が大きい。昨年11月の中間選挙で上院議員への転身を目指したものの、落選。それでも、オバマ前大統領など、民主党有力者が出馬を働き掛けている。

リンカーンも、大統領に当選する前に上院議員選で敗れたことがある。オロークは、オバマを別にすれば今アメリカで最もカリスマ性がある政治家だ。トランプに勝つ確率は65%くらいある。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story