コラム

首都圏郊外の意外な場所で中古マンションが値上がりしている。物流センターを中心としたニュータウン誕生の前兆か?

2022年10月04日(火)12時31分

10地点は、すべて高速道路・バイパスの出入り口がエリア内にあったり、数キロメートルの場所に位置している。そのため、近年、物流施設が増加しているのも、10箇所に共通する特徴だ。

物流施設づくりに積極的な不動産会社によると、上位10位のうち首都圏に位置する8つの市と区はほとんどが物流施設を開発したい場所だという。

実際、相模原市中央区では昨年9月、延べ床面積約33万平米の先進的物流施設「GLP ALFALINK 相模原 1」が竣工。施設はさらに拡大する計画だ。さらに、今年6月、三菱地所と日本生命保険相互会社は、相模原市中央区で大規模マルチテナント型物流施設「ロジクロス相模原」を着工している。

このように増加する物流施設は倉庫機能だけでなく、レストランや買物施設を備え、託児所やシャワースペースなどを充実させるのが現在の主流。便利な買物スポットとして地域住人を積極的に呼び込むところもあり、そうなると物流施設で働く人が飛躍的に増える。結果として、物流施設周辺の住宅需要が高まる。

昭和時代、郊外に大きな工場ができると、そのまわりに従業員の居住区ができて"城下町"などと呼ばれた。同じ現象が巨大物流施設周辺でも起きているわけだ。

その際、新築マンションがなければ、中古マンションの購入者が増える。だから、中古マンション価格が上昇したと考えられる。

最先端物流センターが目立つ圏央道

首都圏では、最先端の物流施設が特に目立つ場所がある。

それは、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)と東京外環自動車道の出入り口周辺。東京中心部を取り巻く環状の高速道路に出入りしやすい場所だ。

そのことを理解してから、上の表を再度みると、圏央道、東京外環自動車道の出入り口に近い市区町村が多いことに驚く。

1位の相模原市中央区、4位の埼玉県川越市、5位の東京都八王子市、10位の東京都青梅市が圏央道の出入り口を利用しやすい。さらに、3位の神奈川県茅ヶ崎市は新湘南バイパスの出入り口に近いのだが、新湘南バイパスは圏央道とつながっている。

つまり、この1年間、全国で中古マンション価格が大きく上がった場所10箇所のうち、じつに5箇所が圏央道を利用しやすい場所であり、物流施設が多い場所ということになる。

これは、注目すべき現象だ。

地方都市でも、高速道路を利用しやすい神戸市垂水区や岐阜県岐阜市で中古マンション価格が上がっている。

全国的に高速道路出入り口周辺には物流施設が増え、それに伴って住宅地としての人気が高まる現象が発生しているわけだ。

現在、物流施設開発には、大和ハウス工業を皮切りに不動産会社各社が積極的に取り組んでいる。今後、物流施設を核とした街づくりが行われるようになれば、物流施設と組み合わせたマンションが首都圏各地に続々誕生する可能性がある......そのとき、圏央道周辺は新世代マンションが多発する先進エリアになるのかもしれない。


※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story