コラム

ハリウッド映画的な女性キャラクターを作る、男性と勘違いされる女性写真家

2019年08月22日(木)12時00分

From Lou Escobar @lou__escobar

<ただのファッション写真ではない。キャラクター・セッティングを用い、女性のセクシーさが誇張された印象的な写真を生み出すルー・エスコバル>

キャラクター・セッティング――創作物に登場するキャラクターの設定――は、小説や映画はもちろん、写真でも、とりわけファッション写真やパーソナルなファインアート写真では、かなり以前から行われてきた。

だがここ近年、さらに勢いがついている。今回取り上げる写真家もそんなトレンドをリードする1人だ。パリ在住、33歳になったばかりのルー・エスコバルである。

エスコバルの作品は、彼女独特のキャラクター・セッティングを生かし、それを作品に染み込ませ、印象的な映画の一場面のように昇華させている。通常「シネマティック」と呼ばれる手法だ。

アメリカのハードボイルド映画や青春路線もの、それらのモーテルやダイナーの場面に引き込まれたかのような感覚を覚える。実際、彼女自身、パリの郊外でアメリカの映画やテレビを見ながら育ち、その影響を受けたという。

キャラクター自身もハリウッド的かもしれない。ファッショナブルで官能的だが、女性目線よりも男性目線で作られたような感じがある(ハリウッドはこのことでしばしば批判されている)。女性のセクシーさが誇張され、時にはダーティーな感じを意図的にまとわせているのである。

そのため当初は、インスタグラムのプロフィールを見ただけの多くの人が、彼女のことを男性写真家だと勘違いしたらしい。以後、「女性」という冠を写真家の上に付けるようになった。とはいえ、作品の目的は、女性の性的魅力をアピールすることよりも、女性自身がよりパワフルになれることを願ってのことだ、という。

作品全体を通して、写真用語で「シグネチャー」と呼ばれる、彼女自身のオリジナル性も見事に確立されている。とりわけ、その色使いとモデルのスタイリングは見事だ。

スタイリングは、エスコバルによれば、彼女のルームメイトでありスタイリストであるアネ・ケボキアンの力に大きく負っている。常に撮影旅行を共にし、エスコバルのプロジェクトに合わせてスタイリングしてくれるらしい。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スズキ、今期収益は過去最高予想 インドなど四輪販売

ワールド

米中が初のAI協議、14日にジュネーブで リスク緩

ビジネス

あおぞら銀、大和証券G本社が520億円出資 業績悪

ワールド

イスラエル軍、ガザ最大の難民キャンプとラファへの攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story