コラム

トランプ演説原稿「破り捨て」は、再選阻止を誓うペロシの宣戦布告

2020年02月06日(木)15時45分

これは共和党議員団の結束が弱いというよりも、どの議員も全州区から選出されている上院議員の中には「支持者の中のアンチ・トランプに配慮しなくてはならない」ことを示していると考えられます。仮にそうした票の受け皿になるような候補が民主党の中で育ってくれば、11月の選挙の行方は分からなくなると思います。

また大統領の演説の中にも大変に気になる部分がありました。それは、現在のアメリカの状態は最高だという言い方の中で、今後の計画としては「人類を再び月に送り、今度は女性も送り込む。更に火星にも人類を送り込む」としていた部分です。どういう意味かというと、「二期目へ向けて他に目立った課題がない」ということです。これは大変に恐ろしいことです。

いずれにしても、下院議長が大統領の演説原稿を破り捨てるという激しい行動で、大統領選の幕は切って落とされたということになります。

ちなみにペロシ議長自身は、「大統領は真実をシュレッダーにかけたのですから、私も演説を切り刻んだまでです」と語っています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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