最新記事
シリーズ日本再発見

健康の名の下に、娯楽、文化、ストレス解消法も制限されていく時代なのか

2021年05月31日(月)11時20分
高野智宏
ストレス

siraanamwong-iStock.

<ストレス解消の方法は人それぞれ。だが喫煙だけは「個人の自由」といかず、日本の社会から敵視され、規制が強化されてきた。それで本当によいのか、この先に何が待ち構えているのか。非喫煙者からも疑問の声が挙がっている>

3度目の緊急事態宣言が発令されるなど、新型コロナウイルスの猛威は収まるどころか、さらにその勢いを増しているように感じられる。

そんな出口の見えないコロナ禍であらゆる制限が課されている現在、強いストレスを感じている人も多いのではないか。メディアでは「コロナストレス」なる言葉を見かけることも多くなった。

ストレスの怖さは周知の通り。ストレスを原因とする病気も多く、長期間の我慢や放置は禁物だ。

どうやってストレスを解消すればいいか。適度な運動や十分な睡眠など、誰にも共通するアドバイスはよく聞くが、ほかにも飲食や買い物など、人それぞれの方法がある。その根本にあるのは「好きなことを楽しむ」という一点に尽きる。

いま、多くの娯楽やレジャーに制限が課されているものの、各々が許容範囲にある好きなことで可能な限りストレスを発散しているのだろう。お酒が好きな人はお酒を飲む、甘党の人はスイーツを食べる。個人個人がそれでストレスを解消できればいい。

しかし、ある人たちにとって最も身近なストレス解消法だけは「個人の自由意志」というわけにいかず、近年、社会から敵視され厳しい規制が課されてきた。そう、喫煙である。

日本では昨年4月に改正健康増進法が全面施行され、居酒屋やバーといった喫煙との親和性が高い店も原則「全面禁煙」となり、喫煙の自由がさらに規制された。奇しくも5月31日はWHOが定めた「世界禁煙デー」。この機会に喫煙とストレスの関係について考えてみたい。

喫煙者にとっては「たばこ=休憩=リラックス」

なぜ、ここまで喫煙及びたばこに敵意が向けられるのか。自著の『自粛バカ――リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋』(宝島社新書)で「いまのたばこバッシングは異常で、もはや常軌を逸した"禁煙ファシズム"だ」と記したのは、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授の理学博士、池田清彦氏だ。

そして氏は、その理由を「喫煙者がマイノリティとなってしまったから」と断言する。

確かに、1967年(昭和42年)には82.3%あった喫煙率が2002年(平成14年)には50%を切り、2016年(平成28年)にはついに30%を下回るなど、この半世紀で喫煙者は多数派から少数派へと、その数を激減させていった(数値はすべて男性平均)。

「人間はもともとバッシング好き。マイノリティでイジメても問題ないと判断すれば、徹底的にイジメるというパトス(熱情)を持っている」と、池田氏は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、物価圧力緩和まで金利据え置きを=ジェファー

ビジネス

米消費者のインフレ期待、1年先と5年先で上昇=NY

ビジネス

EU資本市場統合、一部加盟国「協力して前進」も=欧

ビジネス

ゲームストップ株2倍超に、ミーム株火付け役が3年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中