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渋谷の再開発「続々と超高層ビル誕生」の足元で起こる変化

2019年03月29日(金)16時25分
井上 拓

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渋谷スクランブルスクエア Photo:渋谷駅街区共同ビル事業者

「通り」が、創造文化都市・渋谷の成長の源泉となる

小泉代表理事は渋谷という街の興味深いポイントを教えてくれた。

「渋谷は、小さな通りの集積。通りごとに際立った個性が発展し、性質の違うものが隣り合わせで共存する。まさに通りの文化が渋谷の魅力的なダイバーシティを表象しています」

公園通り、センター街、Bunkamura通り、ファイヤー通り、キャットストリート......と、通りごとに地域の人たち、利用する人たちによって愛称がつけられ、デザインされ、広く浸透している。他区に比べても、これほど通りの名称の多さやカルチャーの多様さがあるのは、渋谷ならではと言えるだろう。

東急グループが牽引する再開発プロジェクトでも、官民連携によって渋谷川沿いの遊歩道が整備されたことで渋谷~代官山方面の回遊性が高まっていたり、原宿・表参道エリアまでをつなぐキャットストリートの起点に複合施設「渋谷キャスト」がオープンしたりと、通りが重要な意味合いを持っている。

古くからの商店会の呼びかけでフェスやイベントに活用されるなど、まさに通りは、暮らす、遊ぶ、働く人たちのユニバーサルな空間だ。「みんなの道であり、自分たちの道」と、さまざまな人を同じ目的でつなぐことのできる共有財産になっている。

渋谷は歴史的に、江戸の淵であり、山の手の外と内の際であり、異業種や外国人、さまざまな宗教が集まった稀有な土地、場所だったとも言われる。つまり渋谷の強みとは、真似できない地形によって、放射状に伸びる通りの多様性がクリエイティブの源泉になり得る点にある。そしてその多様性を許容する器の大きさが、渋谷という街の最大の魅力かもしれない。

東京の他の都市とは異なったかたちで、都市再生を遂げようとしている渋谷。再開発に垣間見えるのは、単にハードだけの大規模工事だけでなく、ソフトとのバランスをはかりながら行うまちづくりだ。

創造文化都市をはじめ、数多くの呼び名を持つように、多様性を許容する文化的土壌を持つ「ちがいをちからに変える街」渋谷が、真に国際競争力のある街として、新たに日本経済の活力、成長の源泉となる未来も、そう遠くないのかもしれない。

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