コラム

「私は信じております」自民党の統一教会報告は逆効果だ

2022年09月20日(火)16時35分
茂木敏充

自民党の茂木敏充幹事長は「私は信じております」と言うが…… Issei Kato-REUTERS

<9月8日に党所属議員と旧統一教会・関連団体との関係についてのアンケート結果が発表されたが、多くの人はそれを信じられない。茂木幹事長の言葉にその根本原因のヒントがある>

9月8日に自民党の茂木敏充幹事長が党所属の国会議員と旧統一教会やその関連団体との関係についてのアンケート結果を報告した。

茂木氏はこれまで党としての「組織的関係」は一切ないと説明してきたが、今回確認を求めた379人のうち何らかの接点があったと回答した議員は179人に上り、全体のほぼ半数を占めることが明らかになった。

少し前の8月31日の会見では、岸田首相が「政治に対する国民の皆様の信頼が揺らいでいる」との考えを示し、「自民党総裁として率直におわびを申し上げます」と謝罪の言葉まで述べた。

福田達夫総務会長(当時)が「何が問題かよく分からない」と発言したのが7月末だったが、厳しい世論の状況が明らかになるにつれ、自民党のスタンスが急激な変化を遂げたことがよく分かる。

その結果としての「点検」ではあった。だが公表後の世論調査も芳しくない。

朝日新聞の調査(9月10、11日)では、自民党の政治家が旧統一教会との関係を「断ち切れない」との回答が81%に上った。同日のNHKの調査でも、旧統一教会問題への自民党の対応は「不十分だ」が65%で、自民党支持層に限っても56%と半数を超えた。

岸田首相が回復に取り組むと宣言した「信頼」は、今も大きく低下したままだ。

その根本的な原因はどこにあるのか。茂木氏が8日の会見で述べたある言葉がヒントになる。

「アンケートに記載のない関係が新たに指摘された場合はペナルティを考えているのか」との趣旨の質問に対し、茂木氏はこう答えた。

「悪意に隠していると、こういうケースはないと、こんなふうに私は信じております」

ここで茂木氏が表明しているのは、点検対象である議員たちへの何の根拠もない「信頼」だ。彼らが嘘をつくことはない、旧統一教会との関係をあえて隠すことはないと、そう言っているわけである。

だが、現下の問題はその「信頼」自体の喪失だったはず。茂木氏が「信じております」という議員たちのことを、多くの人々は信じることができない。

プロフィール

望月優大

ライター。ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書に『ふたつの日本──「移民国家」の建前と現実』 。移民・外国人に関してなど社会的なテーマを中心に発信を継続。非営利団体などへのアドバイザリーも行っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ

ワールド

アングル:殺人や恐喝は時代遅れ、知能犯罪に転向する

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story