コラム

安くて快適な「白タク」配車サービス

2015年12月07日(月)19時34分

北京郊外の自宅からウーバーの車に向かう女性。車中でも仕事をこなすために利用している Kim Kyung-Hoon- REUTERS

「白タク」とは許可なくタクシーを営んでいる車のことを指します。日本ではタクシーなどの営業用自動車は緑地に白数字のナンバープレートを付けていますが、白タクは一般の自動車と同じく白地に緑数字のナンバープレートを付けているので、この名前があります。

 日本ではほとんど見かけなくなりましたが、中国をはじめ途上国ではけっこう見かけます。空港や大きな駅で「クルマ乗っていかない?」と声をかけてくるのはあらかた白タクでしょう。そんなのに乗ったら、安くて快適どころか、高くて不快な結果になることは必定で、生命の危険さえありますから決して引っかかってはいけません。空港で声をかけてくる人は無視し、まずはタクシー待ちの行列を探す、というのが未知の国での鉄則です。

 しかし、中国で最近急速な広がりを見せているスマホのアプリを使った白タク配車サービスは安くて快適でした。どんな感じなのか、まず実体験の様子をご報告します。

 杭州市郊外の待ち合わせ場所に現れた知人は、着くなりスマホを取り出し、「優歩(ウーバー)」のアプリを立ち上げました。すると地図が現れて自分のいる場所を示します。それとともに「優歩」と契約している車が地図上に示され、知人は自分が行きたい場所を書き込みます。すると、そこへ乗せていってよい、という車が名乗りを上げ、知人のスマホにはその車種や運転手の写真などが現れます。

 待つこと約15分。その間に知人は運転手と直接電話して自分が立っている位置なども知らせました。現れたのは黒いアウディA6。シートはキャメル色の革張りで、車内はとても清潔です。知人によれば「優歩」では15万元(約300万円)以上の車を使うことになっているのだそうですが、知人が運転手のおじさんに同意を求めると、おじさんは「いや30万元以上だ。僕の車も30万元するんだ」と言っていました。

「白タク」の車のほうが高級できれい

 その車に乗った距離は2キロ少々といったところです。降りるときには何も支払いません。料金はスマホの支払いサービスで引き落とされるからです。知人によればその時の料金は7元(編集部注、約135円)で、一般のタクシーに乗れば9元(同173円)かかるといいます。「優歩」の場合、料金は1キロ3元(同58円)余りに定められており、距離単価は一般のタクシーより少し高めですが、タクシーのような初乗り料金がないので、短距離であれば「優歩」のほうが安いのです。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:大手投資企業が商業用不動産投資を拡大、銀

ビジネス

中国人民銀、1年物MLF金利据え置き 差し引き供給

ビジネス

今年のジャクソンホール、金融政策伝達がテーマ=カン

ワールド

トランプ氏不倫口止め裁判で元腹心証言、弁護団は信頼
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story