コラム

ロシアという国の本質を考えると、外国企業「国有化」は十分あると覚悟すべき

2022年03月23日(水)17時15分

かつての日本では、日中戦争をきっかけに、当時は商工省(現経済産業省)の幹部だった岸信介元首相らが軍部と協力し、旧ソ連を参考に国家統制的な産業政策を立案した。プーチン政権による一連の施策は総動員体制の日本やスターリン時代の旧ソ連、あるいは毛沢東時代の中国の手法とよく似ている。

国家主義的な産業政策のほとんどが失敗に終わっており、当然のことながら豊かな国民生活も期待できない。だが強権的な政府の場合、国民の不満をある程度、実力で抑圧できる。自由貿易や国際金融に依存しないため、戦時中の日本や北朝鮮のように、国民を窮乏させながらも、権力の維持を図ることができてしまう。

ウクライナ侵攻の泥沼化によってプーチン政権の継続が難しくなっているとの指摘もあるが、仮にプーチン氏が失脚しても、完璧な民主主義体制が確立される保証はない。現時点において統制主義的な経済体制へのシフトが進みつつある現実を考えると、プーチン政権が維持された場合はもちろんのこと、ポスト・プーチン体制においても、内向きな国家運営が続く危険性について考慮に入れておく必要があるだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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