コラム

中途半端な「緊急事態宣言」は、守りたいはずの経済にも逆効果か

2021年01月13日(水)11時44分

経済学的な視点に立てば、デジタル化を通じて同じ取引を非接触・非対面に置き換えない限り、消費を活発にすると、ほぼ確実に人の移動が増える。

飲食店が感染拡大の大きな要因の1つとなっているのは事実だろうが、感染経路不明も含めて、それ以外の経路がたくさん存在するので、今回の宣言ではその部分はカバーされない。感染状況が悪化すればオリンピックの開催が危ぶまれることも考え合わせると、中途半端な宣言が、逆に経済的にも中長期の不確実性を高めた可能性もある。

経済界からは、外出自粛による急激な経済の落ち込みが回避できたことを安堵する声と、感染状況の悪化を懸念する声の両方が聞こえてくる。今回の宣言を受けて全面的なテレワークに戻る企業も出てくるだろうが、宣言前の状態を維持する企業も多いだろう。

現在は感染防止策が事実上、企業に一任されている状況なので、自主的なコロナ対策で社員を守る企業とそうでない企業の違いが鮮明になる。企業間の格差が拡大するという望ましくない結果をもたらす可能性も否定できない。

<本誌2021年1月12日発売号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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