コラム

現金給付と休業補償、コロナ経済対策で救われるべきは誰なのか?

2020年04月16日(木)11時55分

従業員を休ませた後、どれだけ持ちこたえられるかは企業の体力次第であり、完全に企業の自己責任の範疇になる。ただ零細事業者の場合、事業オーナーが無制限の個人保証を求められるなど、リスク分散が実現できていないケースも多い。一定規模以下の事業者については、事業オーナーも従業員と同様の扱いにするといった配慮が必要だろう。

休業補償ではなく、世帯や個人に対する現金給付に支援を一本化する場合には、各人の状況は考慮されないので、とにかく給付までの時間を短くすることが最優先となる。人によっては今日、明日の生活に困っているはずなので時間的猶予はない。この場合、所得制限は実施せず、一定額を一律給付するのもやむを得ない。

高額所得者に給付することについて疑問視する声もあるが、給付を一時所得にすれば税金で国庫に返ってくるので、高額所得者への過度な恩恵も回避できる。現代資本主義というのはリスクとリターンで成立しており、リスクを引き受けるのは投資家や経営者の役目である。会社が誰のものかを考えれば、おのずと対象もはっきりするはずだ。

<本誌4月14日号掲載のものを一部変更・加筆>

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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