コラム

菅政権に忍び寄る「ええじゃないか」的政権交代【2021年展望】

2020年12月28日(月)15時30分

トランプ後の日米外交で日本は自主防衛能力を「賢く」増強することを検討してもいい REUTERS

<ワクチンでコロナは収まり、東京五輪は大成功。その勢いで政権維持──。自民党は2021年をそう展望するが、感染症対応で失策が続けば、自暴自棄的な政治改革の機運が高まる可能性も。特集「ISSUES 2021」より>

2021年は丑年。丑年と言うと、何か新しい芽が出てくる年なのだそうだ。実際、1961年にはアメリカでケネディ大統領が登場し、ソ連ではガガーリンが初の宇宙飛行を行った。2009年には日本で民主党への政権交代が起きた。どれも不幸な結末を迎えたことが気になるが。
20201229_20210105issue_cover200.jpg
自民党の長老たちはこう皮算用しているようだ。コロナ禍もワクチンで収まり、東京五輪は新型コロナ克服を世界で祝う大祭典に。その勢いで秋の総選挙に勝利して政権を維持しよう、と。

本当にそうなるだろうか。筆者は1991年のソ連崩壊の場に居合わせたことがあるが、あの足元が割れて地面ごと崩れ込む感覚、これに似たものを日本も味わうことにならないか。

思い出そう。コロナがひどくなる前は、「安倍の後がいない。安倍4選しかないのでは?」という議論が出ていたことを。それがコロナで画面がひどく乱れたと思ったら、主役の安倍晋三首相がすっといなくなり、ディレクター格の菅義偉官房長官が主役に昇格。どこか板につかないが、それでも日本は回るようだからいいかと思っていたらコロナ第2波でもGoTo路線に固執したことで支持率を落とし、40兆円もの財政出動でまたバラマキだ。

2021年前半は、この数年には珍しく大きな選挙や政治イベントがない。景気刺激予算案の採択と、コロナ騒ぎの間隙を縫って行われるだろう外交イベント──特に菅首相の訪米と、ジョー・バイデン新政権が招集するだろう「先進民主主義諸国の首脳会議」への参加、そしてもしかすると北朝鮮との関係推進──だけで、運命の秋に向けてのモメンタムを維持することができるか。もし、コロナワクチンに深刻な副反応や後遺症が出れば、経済は大崩れ、東京五輪の開催も危ぶまれることになる。

野党のほうは中村喜四郎という名伯楽を得て、選挙協力を強化しつつある。12年ぶりに、幕末の「ええじゃないか」的、自暴自棄的な政権交代へのモメンタムが盛り上がっても不思議でない。

しかし政権交代すればそれで済むというものでもない。戦後の、資本主義か社会主義か、親米か反米かの古びた対立軸で政権交代を繰り返しても、日本は先に進まない。問題は、明治以来の「国の形」、つまり政治制度、企業の在り方、そして西欧の生んだ「近代」の全てが賞味期限に来ていて、意識そして仕組みに大きな変革が必要なのではないかということだ。天皇制もその例外ではない。

日本のモデルチェンジを

2021年の日本経済は、内需も輸出もコロナ次第。そして「ブラックスワン」としては、アメリカ発の金融危機、あるいは中国経済の大崩れ(今は順調に回復しているといわれるが、内需バブルかもしれない)が考えられる。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算

ワールド

メリンダ・ゲイツ氏、慈善団体共同議長退任へ 名称「

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、今週の米経済指標に注目

ワールド

原油価格上昇、米中で需要改善の兆し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 8

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 9

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story