コラム

AIとロボットが招く2030年のディストピア

2018年12月22日(土)11時40分

こうして利潤がゼロとなり、モノづくりへの投資がなくなった2030年にはイノベーション(技術革新)が止まる――そうなればかつて冷戦後に政治学者フランシス・フクヤマが予言した「歴史の終わり」が今度こそ本当にやって来る。それは退屈な社会だ。創造的な仕事に励む人間はひと握り。大企業に入るために有名大学に入る必要もなくなった日本人の大半は、ゴロゴロと日々を過ごすことになるだろう。

勉強もしない青年たちは自分を誇示するために、徒党を組んで街を徘徊。他の青年グループと果たし合いをしたり、ロボットを襲ったり、無人自動車にあおり運転を仕掛けたり、他人の家に押し入って暴行の限りを尽くしたり。暴力本能をほしいままに発揮する――。

こうしてユートピアは無政府状態の混乱か、AIと少数の人間に監視・管理される社会と化す。こうしたディストピアを描いた映画『時計じかけのオレンジ』のような情景が正夢にならないよう、来年以降も皆で知恵を絞っていきたいものだ。

<本誌2018年12月22日号掲載>


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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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