ニュース速報

ビジネス

米金融政策、少なくとも1年は現行維持が適切=セントルイス連銀総裁

2020年01月18日(土)05時55分

米セントルイス地区連銀のブラード総裁は、米国の長短利回り格差はまだ健全な状態には戻っていないものの、連邦準備理事会(FRB)が昨年に実施した3回の利下げの効果を見極めるため、政策を少なくとも1年は現行にとどめることが適切になるとの考えを示した。昨年撮影(2020年 ロイター/Jonathan Crosby)

[セントルイス 17日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は、米国の長短利回り格差はまだ健全な状態には戻っていないものの、連邦準備理事会(FRB)が昨年に実施した3回の利下げの効果を見極めるため、政策を少なくとも1年は現行にとどめることが適切になるとの考えを示した。

ブラード総裁は約1年前、米国債利回りの状況を踏まえると市場で米経済に対する信頼感が失われている可能性があると警告。ただロイターが14日に実施したインタビューでは、「FRBは2019年は大幅な利下げを実施した。この結果は20年に顕在化する」とし、「今年上半期、または年間を通して、どの程度の影響が出るか見極めたい」と述べた。

その上で「バブルが発生する環境にあるためにFRBが政策を変更する必要があることを示すものは現時点では何もない」と指摘。ただ警戒はしていると述べた。

FRBは19年は7月、9月、10月に合計3回の利下げを実施。ブラード総裁はより大きな幅の利下げを主張し、連邦公開市場委員会(FOMC)で2回、反対票を投じた。ただFRBは12月のFOMCで全会一致で金利据え置きを決定。政策担当者の間で経済情勢が大幅に変化しない限り金利変更は必要ないとの考えが浸透した。

ブラード総裁は19年に特徴的だったこととして、低失業、低インフレ、低金利、金融システムの安定がすべて同時に実現できるとの事実をFRBが完全に受け入れたことが挙げられると指摘。「(19年は)1990年代や2000年代に見られた金利水準には戻らないとの考えが受け入れられた年だった。この方向に向けた努力が打ち切られただけでなく、反対に向かうことになった」と述べた。

20年については、通商を巡る先行き不透明性が高い状態に企業が適応したことで予想外に良好な事態が生まれる可能性があると予想。労働市場の引き締まりを受け生産性の向上につながる設備投資が促進されるほか、通商を巡る先行き不透明性が解消すれば、米経済成長は加速しインフレ見通しも改善する可能性があるとの見方を示した。

ただ、米国債の利回り曲線にはなお留意していると表明。10年債と2年債との利回り格差は現在約25ベーシスポイント(bp)と、経済成長が続いていた1990年代の水準をなお大きく下回っているとし、この格差が少なくとも50bpまで拡大すれば、市場に経済成長とインフレに対する信頼感が出ていることが示唆されるため、より安心できると述べた。

一方、こうしたことは現時点で追加利下げが必要と主張する理由にはならないとし、「われわれは正しい方向に進んでいる」と述べた。

ブラード総裁は今年のFOMCで投票権を持っていない。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、S&Pは横ばい 長期金利

ビジネス

エアビー、第1四半期は増収増益 見通し期待外れで株

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、金利見通しを巡り 円は3日

ビジネス

EXCLUSIVE-米検察、テスラを詐欺の疑いで調
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中