コラム

もうEVに乗り換えるしかないのに、日本の「出遅れ感」と「痛恨のミス」が気になる...

2023年12月27日(水)12時40分

新技術の例に漏れず、EVの普及でも最初にネックになるのはコストの高さだ。しかし政府の補助金のおかげで、今では一般的なEVならエンジン車とほぼ同程度の予算で購入できる。

私は4年前に今の車を購入したとき1万ドルの割り戻しを受けた。今では1万2000ドルか、それ以上の割り戻しがある。他の国々にも同様の制度があるし、アメリカでは24年にシボレーのエクイノックスなど3万ドル程度のEVが販売される。

気になる日本勢の「出遅れ感」

さらに注目すべきは、バッテリー技術が大きく進歩し、価格が大幅に下がっていること。18年には容量1キロワット時当たり181ドルだったが、23年には131ドルになり、25年か26年には100ドルになる見込みだ。

ここまで来ると、EVの製造コストはエンジン車のそれを下回る。バッテリー価格はその後も下がり続けるだろう。加えてEV市場に参入するメーカーが増えれば、競争の激化も価格を押し下げる。

20年にはアメリカで購入できるEVは約200車種だけだったが、24年には500車種を超えるという。

維持費はどうか。この4年間、妻のテスラと私の起亜(走行距離は合計で13万キロ以上)の維持費は実質ゼロで済んだ。

EVには補修が必要になるような機械的な部品がほぼないので、維持費がかからない。実際、EVを購入して走らせるコストは、走行距離1キロ当たりでエンジン車より約40%安上がりで済む。私たち夫婦は維持費を年間1000〜3000ドル節約し、加えて燃料代で2000ドル節約できている。

EVの充電コストは同じ距離を走るためのガソリン代と比べ、3分の1程度で済む。1キロ当たりのEVの走行コストは24年も下がり続けるだろう。

航続距離に対する不安もEV購入をためらわせる大きな要因だ。この不安には2つの要因が絡む。バッテリーが持つかどうか、そして充電ができるかどうかだ。

けれども一般的なEVの航続距離は400〜500キロで、もっと高価なEVなら1回の充電で800キロ走れる。平均的なアメリカ人が車を走らせるのは1日60キロ程度なので、バッテリー切れで立ち往生などという心配はない。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story