コラム

ドイツで起きる食のイノベーション──人工肉や昆虫食

2021年03月24日(水)18時15分

昆虫食のスタートアップ

昆虫食の最初の新興企業は、スイスのEssento社とドイツのオスナブリュックに設立された会社Bugfoundationである。Essentoは、昆虫食品のヨーロッパのパイオニアで、2013年からヨーロッパ市場で活躍しており、スイスのにおける食用昆虫の食品としての法改正と承認に貢献した。

ドイツのBugfoundationは、ベルギーとオランダに最初の昆虫レストランをオープンした。そこでは、穀物幼虫から作られたバクスバーガーが提供されている。同社はまた、2017年からEssentoとともに、スイスのスーパーマーケットで製品を販売しており、起業家たちはベルリンをはじめドイツでの販売許可が下り次第、昆虫ベースの多彩な食品を販売する計画だ。

勇気あるテスト

20年前のドイツでは、生の魚を食べることを誰も想像できなかった。今日、ヨーロッパ中のスーパーマーケットで寿司を見つけることができる。これが昆虫にも当てはまるかどうかはまだ分からない。しかし、はっきりしていることが1つある。それは、現在の食料システムには多くの点で深刻な問題があり、早急に代替案を検討する必要があるということだ。

将来、ブレードランナーで描かれた昆虫農場が実際に稼働し、幼虫のハンバーガーやコオロギのスナックが世界中で普及するのかという疑問は残っている。少なくとも欧州では、管理上のハードルは低くなっている。後は私たちが、徐々にこれまでの肉を減らし、環境保護という理念を呑み込みながら、昆虫を食べる「勇気あるテスト」に挑戦するだけである。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

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