最新記事
米軍

ヨルダン米軍基地への無人機攻撃で3人死亡は「米軍側の戦略的ミス」

Military Expert: US Troops Killed in Jordan Were Vulnerable to Attack

2024年1月29日(月)17時44分
ゲイブ・ウィズナント
バイデン米大統領

シリアと国境を接するヨルダン北東部の米軍基地にドローン(無人機)による攻撃があり、米兵3人が死亡したほか、数十人が負傷した可能性がある。バイデン米大統領(写真)と米政府当局者らが28日に明らかにした。写真は27日、サウスカロライナ州コロンビアで撮影(2024年 ロイター/Tom Brenner)

<イランと戦う事態を避けるためにも、米軍は守りを固め、今回のように弱点を突かれて被害を出すようなことがないようにしなければならない、と軍事専門家は言う>

米陸軍のダニエル・デービス退役中佐は1月28日午後、フォックス・ニュース・ライブに軍事専門家として出演し、司会者のアーセル・ネビルに、無人機攻撃でヨルダン駐留の米軍部隊に死者が出たことは、「戦略的な弱点」を突かれたことを示していると語った。

デービスが指摘したのは、1月27日に中東におけるアメリカの同盟国であるヨルダンにある米軍基地がドローンの攻撃を受け、米軍兵士3人が死亡、数十人が負傷した事件のことだ。2023年10月にパレスチナのガザ地区でイスラエルとハマスによる戦闘が始まって以来、中東で米軍に死者が出るのはこれが初めてとなる。


ジョー・バイデン大統領は、ヨルダンのシリア国境付近に駐留する米軍部隊に対して27日の夜に攻撃が行われたことを発表、イランに支援された過激派グループの仕業だと非難した。

バイデンは、ホワイトハウスが発表した声明の中で、「今のところ、この攻撃の事実に関する情報を収集中だが、シリアとイラクで活動する親イラン過激派集団による犯行であることは分かっている」と述べた。「われわれは犠牲者の責務を引き継ぎ、テロと闘っていく。疑いの余地なく、われわれが選んだ時期と手段で、この犯行に関わる者すべてに対して責任を追及していく」。

攻撃に弱い地理的問題

ワシントンのシンクタンク、ディフェンス・プライオリティーズの上級研究員であるデービスは、先日の攻撃で死傷者を出した部隊の所在について疑問を呈した。

「イラクとシリアの周辺に部隊を散開させ、さらにヨルダンにも部隊を駐留させるのは無意味だ。なぜなら、これらの基地はアメリカ陸軍にとって何の役にも立たないからだ」と、デービスは言った。「彼らは戦略的な弱点となる。米軍部隊がイランに支援された勢力にとって攻撃しやすい駒として利用されている。今回、それが現実になった」

デービスはこう付け加えた。「もっと装備が充実して、身を守りやすい場所に、米軍部隊を配置しなおす必要がある。そのうえで外交問題を考えればいい」

1月28日午後の時点で、CNNはこの攻撃で「30人以上」の米軍兵士が負傷したと伝えている。

ホワイトハウスの報道部は記者団に対し、バイデンは28日の朝、ロイド・オースティン国防長官、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、ジョン・ファイナー大統領副補佐官から、この攻撃について説明を受けたと述べた。

28日午後、本誌がコメントを求めたところ、国防総省(DOD)は死傷者を確認し、電子メールで「遺族への配慮と国防総省の方針に従い、近親者への通知後24時間経過するまで、軍人の身元は伏せる」と述べた。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を

ビジネス

米4月卸売物価、前月比+0.5%で予想以上に加速 

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中