最新記事

中台関係

「台湾有事」で沖縄をも揺さぶる中国だが、逆に日米を団結させるだけ

2023年4月10日(月)12時51分
A・A・バスティアン (ワシントン在住の歴史作家)
普天間基地

宜野湾市にある普天間基地を眺める人々 Issei Kato-REUTERS

<蔡英文総統の訪米への「対抗措置」とみられる台湾周辺での軍事演習。沖縄も含む「第1列島線」への威嚇は、長年の駐留で沖縄と日本に深い愛情が芽生えたアメリカ人の気持ちも逆撫でる>

中国は昨年12月16日、台湾への威嚇を拡大し、日本(および同盟国のアメリカ)に対するより直接的な行動に出た。空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を通過したのだ。

中国海軍は12月17~22日、遼寧から計180機の戦闘機とヘリコプターを飛ばし、米軍基地のある沖縄を含む南西諸島を想定したと思われる演習を実施した。

演習が行われたのは、米軍が演習に使用する海域や空域の近く。日米両国が沖縄の中では比較的安全と考えていたエリアだ。

こうした中国の動きは、ある程度まで通常の反応だ。中国は台湾の防衛力強化に対抗して頻繁に武力による威嚇を行っている(編集部注:今年4月8~10日にも台湾周辺で軍事演習を行うと発表した)。しかし、沖縄自体にも独自の戦略的重要性がある。

沖縄には悲劇の歴史がある。独立国だった琉球王国が日本に併合されたのは19世紀だが、最悪の人的損失が生じたのは第2次大戦中。旧日本軍が命令したとされる集団自決を含め、民間人の約4分の1が失われた。

戦後、沖縄は米軍の拠点となり、地元の人々は農地を手放すことを余儀なくされ、米軍との間で長期にわたる問題が発生した。

当時、中国はアメリカによる日本封じ込めの恩恵を受けていた。だが現在の状況は大きく変わっている。日米関係はより緊密に、米軍のプレゼンスはより大胆になった。

中国海軍の増強が進み、アメリカとの衝突の可能性が高まっている今、中国は第1列島線からの出口を以前にもまして必要としている。

第1列島線とは、中国と太平洋の間にある台湾や沖縄を含む大小の島々を結ぶラインのこと。この島々の領有権を主張する国の存在は、戦時に中国が外洋に出づらくする可能性がある。

アメリカのジェームズ・スタブリディス退役海軍大将は著書『海の地政学』で、南西諸島が中国の出口になる可能性があると主張した。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ一時初の4万ドル台、利下げ観測が

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、4月輸入物価が約2年ぶりの

ビジネス

中国の生産能力と輸出、米での投資損なう可能性=米N

ワールド

G7、ロシア凍結資産活用巡るEUの方針支持へ 財務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中