最新記事

日本社会

見過ごされている「無園児」と育児ストレスの関係

2022年7月20日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
家庭の母子

入所要件を満たしていないことなどから多数の就学前児童が「無園児」として過ごしている takasuu/iStock.

<保育所に空きが出ている地域では、利用要件を緩和して希望する家庭に門戸を開いてはどうか>

学校への就学が義務付けられるのは6歳になってからだが、それまでの時期(就学前)の過ごし方は多様だ。幼稚園や保育園に行く子もいれば、どちらにも行かずに家庭で過ごしている子もいる。

2020年の『国勢調査』によると0~5歳児は551万人で、内訳は幼稚園児が14.0%、保育園児が33.8%、認定こども園児が10.1%、その他が42.1%となっている。以前は幼稚園児が多かったが、共稼ぎ世帯の増加もあって今では保育園児の方が多い。幼稚園に保育園の機能(長時間預かり)を持たせた認定こども園もできていて、こちらも在所者が増えている。

残りの「その他」は、これらの学校・施設に行っておらず、家庭で過ごしている子とみていい。いわゆる「無園児」で、その数は232万人。生後間もない乳児が多いが、年齢を上がっても一定数いる。上記の内訳を、年齢別に示すと<図1>のようになる。

data220720-chart01.png

0歳の乳児では無園児が9割を占める。年齢を上がるにつれ幼稚園や保育園に通う子が増えるが、3歳でも28.5%、5歳でも15.2%が無園児だ。児童福祉施設の保育園は「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うこと」を目的とし、保護者がフルタイム就業をしていることが入所要件だが、これを満たしていないということで、わが子を預けられない家庭も多い。その他、独自の教育を受けさせているなど事情は様々だろうが、無園児が思ったより多いという印象を受ける。

無園児の保護者の中には、育児ストレスを抱えている人もいるだろう。家庭内で四六時中接していては、わが子といえど可愛いと思えず、些細なことで手を上げてしまうこともある。集団生活を経験していないことが、小学校での生活への溶け込みを難しくすることもあり得る(小1プロブレム)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ABNアムロ、第1四半期は予想上回る29%増益 高

ビジネス

三菱UFJFG、発行済み株式の0.68%・1000

ワールド

中国、台湾新総統就任控え威圧強める 接続水域近くで

ワールド

米財務省、オーストリア大手銀に警告 ロシアとの取引
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中