ホワイトハウスに招かれたエール大学出身の歴史TikToker、サキ報道官に異議申す!
“I’m a TikTok Influencer”
SNS上での情報共有はさまざまな事実や意見を紹介することが重要 KAHLIL GREENE
<TikTokはダンスやバック転動画だけではない。今ではジャーナリストや学者もこのプラットフォームで情報発信している。プロパガンダと国益とインフルエンサーとしての責任とは?>
僕のTikTokのユーザー名は「Z世代の歴史家」だ。大学では歴史を学んだし、自分も「ほぼ21世紀人」を意味するZ世代の仲間だからだ。
エール大学では、黒人として初めて学生団体の代表を務めた。人権擁護のいろんな活動にも取り組んだ。昨年のキング牧師記念日には、彼の功績についてTikTokに初めて動画を投稿した。
この動画は140万回以上も再生された。以来、ずっと教育的なコンテンツをアップしてきた。ほかにも仕事はしているが、今の僕にとってはソーシャルメディアが社会貢献の主な手段だ。
3月9日、ホワイトハウスからメールが届いた。翌10日にTikTokのインフルエンサー向けに、ウクライナ情勢についての説明会をズームで行うという案内だった。
説明会では、国家安全保障会議のメンバーやホワイトハウスのジェニファー・サキ報道官が、ウクライナ情勢の最新情報を(もちろんアメリカの視点から)説明した。ウクライナ危機に関しては、TikTok上に不満の声が多くあった。
例えば奴隷制に関する補償などの国内問題よりずっと大きく報じられ、手厚い支援の対象になっていると。僕はその声を政府に伝え、ウクライナ支援について、どうすれば国民の支持を得られると思うかと質問した。
サキ報道官らは、今回の危機は第2次大戦以降で最大規模の侵略だと説明した。ウクライナで起きていることが世界中に、ひいては全ての米国民に影響を及ぼすと述べ、ウクライナを支援することはアメリカの国益になると繰り返し強調した。
正直な答えだと思ったが、その後、彼らがさらに言葉を重ね続けたことには違和感を覚えた。それ以外の危機に目を向ける余力はないとほのめかし、論点をずらすような発言もあった。
異なる事実や意見は省略
参加したインフルエンサーの多くは、普段から政治の話をしている面々だった。だが説明会に関する彼らのその後の報告は、多くがきちんとした分析や批評を欠き、政府の言い分を繰り返しているだけのように思えた。歴史を学び、プロパガンダの機能を熟知している者としては、「事実や異なる意見の省略」が気掛かりだった。
情報を共有する際は、あらゆる異なる事実や意見を共有すべきだし、ホワイトハウスで当局者が戦争について話すのを聞く機会を得た者には、それだけの責任が伴うと思う。