最新記事

中東

パレスチナ紛争再び激化の恐れ ラマダンにエルサレムで衝突

2022年4月19日(火)09時07分

イスラエルのベネット首相は、当局がエルサレムとイスラエル全域で平安を回復するために取り組んでいるとしながらも、「あらゆるシナリオに備えており、治安部隊はいかなる任務にでも当たれる準備がある」との声明を出した。

殺害の新たな波

先週は、西岸の街ジェニンで難民キャンプのパレスチナ人がイスラエル人3人を銃撃して殺害し、テルアビブのバーでも数人にけがを負わせた。パレスチナ人は最近イスラエルの都市で相次ぎ発砲しており、これで死者は14人と、2016年以来の襲撃で最多を記録。ベネット首相は「テロの新たな波」が発生したと述べた。

イスラエル軍は今年、パレスチナ人を40人殺害している。

パレスチナ外務省は「戦場での醜い処刑」だと非難した。

イスラエルは西岸とイスラエルとの分離壁を修復したり、大がかりな逮捕を実施するなどの治安措置を講じる一方、西岸とガザ地区に住むパレスチナ人のイスラエル、エルサレム入りを比較的緩和してきた。

イスラエルのラピド外相は14日、「力の行使に制限はない」と発言。ただ、パレスチナ人が混乱を引き起こすことなく「静かに」を祝うことは認めると付け加えた。

世論調査員のシカキ氏によると、アルアクサ・モスクで衝突が起こる15日まで、こうした緩和措置は一部パレスチナ人の不満を和らげていた様子だ。

しかし、イスラエルが1967年の戦争で占領した土地を55年にわたり軍事占領してきたことへの積もり積もった怒りと恨みの方が、譲歩の気持ちに勝るとシカキ氏は言う。

イスラエルの人権団体ベツェレムによると、西岸と東エルサレムで取り壊されたパレスチナ人の住居の数は昨年、2016年以来で最多数に上った。

過去5年間、イスラエルが直接支配する西岸の6割で、パレスチナ人に与えられた建築許可はわずか33件だが、ユダヤ人入植者については1万6500件を超えた。これは人権コンサルタントのイタイ・エプシュタイン氏がイスラエル国防省のデータを引用して明らかにしている。

パレスチナ解放機構(PLO)の元法律顧問、ダイアナ・ブットゥ氏は「占領の全体構造は暴力だ」と指摘。「何十年も日常的に暴力が続いている。それがついにイスラエルに跳ね返る段階に達しただけのことだ」と語った。

(Henriette Chacar記者、 Ali Sawafta記者、 Nidal al-Mughrabi記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏ソジェン、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中