ウクライナ侵攻受け欧州でNATO拡大機運 「安全保障上のロシアの脅威」現実に
治安当局は3月29日、フィンランドのNATO加盟議論を快く思わないロシアが、世論操作や威嚇に動く事態に警戒すべきと注意を呼び掛けた。ハービスト外相はロイターのインタビューで「国防政策について拙速に決定する必要はない。だが(NATOに)加盟する可能性によって、われわれが干渉やハイブリッド攻撃の標的になってもおかしくない。フィンランドはこれに備え、NATO加盟国の対応にも耳を傾けなければならない」と語った。
スウェーデンも雰囲気一変
スウェーデンがロシアに脅威を感じるようになった時期は、フィンランドよりも遅かった。例えば冷戦終了後は国防費を削減し、緊急用シェルターの保守管理も放棄していた。しかし今や雰囲気は一変しつつある。ロシアが2014年にクリミアを強制編入すると、スウェーデン政府は再び軍備を強化し、ロシアのバルト艦隊本拠地に近いゴトランド島の兵力も増強。その年に限定的な徴兵制を復活させた。
今月に入って政府は、国防費を2倍に拡大して国内総生産(GDP)の2%前後にするとともに、いざとなれば最大700万人が避難できるように防空壕ネットワークを再整備する方針を打ち出した。
3月2日に出た世論調査では、ロシアの脅威が増したと答えた人の割合は約71%と、1月時点の46%を大幅に上回った。手動式発電ラジオや水のろ過装置など防災用品がよく売れている。
外交関係者や政治家は、フィンランドのほうがスウェーデンより早くNATOに加盟することになりそうだと言う。フィンランドのハービスト外相はこの問題で「ほぼ毎日」スウェーデンの外相と話し合っていると明かした。
ある外交政策専門家は「フィンランドが単独加盟するのは理想的ではない。加盟手続きに内在するあらゆるリスクがフィンランドに降りかかるからだ」と解説した。
スウェーデンでは、政府と野党が安全保障政策の分析作業を進めており、5月にも結果が公表される見通し。アンデション首相は3月30日に出演したテレビ番組で、この結論がどうなるか見極めるのが大事だと強調した。与党の社会民主労働党はNATO加盟に反対しているが、野党4党は加盟を支持している。
(Robin Emmott記者、 Essi Lehto記者、 Simon Johnson記者)
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