最新記事

ウクライナ戦争

2014年には良かったロシア軍の情報収集・通信が今回ひどい理由

2022年4月22日(金)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

スティンガーとジャヴェリンで対抗するウクライナ軍

それはこの怒濤の進軍、と見えたものは、すぐ足踏みし、3月末にはロシア軍は劣勢になったからだ。

映像を見ると、開戦当初キエフ近郊に飛んできたヘリコプターの一機はウクライナ側に早くも撃墜されている。低空のヘリは、アメリカなどがウクライナに提供した対空ミサイル「スティンガー」で簡単に撃ち落とせる。

YouTubeなどで見ることができるが、スティンガーは一人で持ち運べる。肩にかついで狙うヘリや軍用機に方向を定め、それが飛ぶ方向やスピードに合わせて少し振った後発射する。その後は自分で勝手に相手を追いかけていく怖いミサイルだ。

ウクライナ軍は戦車や巡航ミサイルなどはあまり持っていない。しかし、このスティンガー、そしてロシアの戦車を破壊するのに便利な「ジャヴェリン」という、同じく一人で持ち運び、発射できるミサイルを持っている。

双方ともニュースで報道されただけでも数千発ずつウクライナに供与されているから、ロシアのヘリ、戦車を全滅させることができる勘定になる。高空を高速で飛ぶ戦闘機は、ロシア製の対空ミサイルS-300で撃墜する。

その結果、早くも3月中旬には戦車約400台、装甲車1200台などが破壊された。ロシア軍が全国で保有する戦車は約2500両で、ロシアはその6分の1弱を3週間で失ったことになる。

北方ベラルーシから押し寄せた軍隊は狭い車道の上を60キロメートル以上もの「車列=渋滞」となって、キエフの手前で2週間ほど止まったままとなる。戦争映画にあるように、野原を戦車が横隊になって攻め寄せたいところだが、車道の周りは森林、あるいはぬかるみの畑だ。車道を一列縦隊で行くしかない。

ニュースを見ると、故障車が出ているという。「故障車で高速道路は10キロの渋滞になっています」という交通情報のフレーズを思い出して笑ってしまう。そう言えば、ロシアの戦車はクレムリン前のパレードでも故障して、恥をさらしていた。

何より一列縦隊では、ウクライナ軍の対戦車ミサイルに一台がやられただけで、後が全部つまってしまう。それに、60キロメートル先の先頭に食糧を届けようとしても、なかなか難しいだろう。兵隊は、ウクライナ軍のジャヴェリン・ミサイルなどで撃たれるのを怖がって、車両からおりて草原に野営していた、という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中