最新記事

中国

中国ゼロコロナ政策は「コロナの煉獄」 米、香港紙などが批判

2021年11月10日(水)19時00分
青葉やまと

四川省成都、ロックダウンされた住宅地の近くで新型コロナの感染検査を受ける人々 cnsphoto/REUTERS

<感染者ゼロを掲げる中国当局だが、市民生活に大いなる犠牲が。デルタ株にゼロコロナ路線は無意味との指摘も>

新型コロナウイルスによるパンデミックの長期化に伴い、各国政府は「ウィズコロナ」の考え方に舵を切りつつある。ウイルスの完全な駆逐は非常に難しいとの前提に立ち、医療と経済のバランスを模索するアプローチだ。

一方で中国政府は、新型コロナを国内からほぼ完全に駆逐する「ゼロコロナ」戦略を堅持する。入国時の厳しい隔離措置により水際対策を万全のものとするほか、国内での感染者発生の際には厳格な対応を取っている。しかし、市民生活への影響は甚大だ。

米公共ラジオのNPRは、中国南西部の雲南省瑞里の町が昨年3回もロックダウン対象となったと報じている。ある女性は45日間の隔離生活を命じられ、その間十分な食糧の供給も受けられなかった。

別の夫婦も、不衛生で湯も出ないホテルの一室に突如隔離され、食事も不十分だったという。家には4歳と14歳の娘だけが取り残された。隔離費用は自己負担となり、ホテル代を賄えない人々は貨物用コンテナでの生活を強いられる。

都市部でも厳しい対応が続く。10月30日には、感染者1名が上海ディズニーランドを訪れていたことが判明した。翌夜、警察の部隊がパーク全体を突如として封鎖した。滞在中だった3万人以上の入園者が深夜まで帰宅を許されず、寒さのなか保健所職員による全数検査を待った。

ブルームバーグは動画のなかで、ほかにも厳格な対応が実施されていると報じる。北京では感染した学校職員1名がワクチン接種に臨んだことで、同じ会場に居合わせた他の職員が務める小学校すべてを閉鎖した。生徒たちは下校を認められず、あまりの寒さに保護者が毛布を届ける一幕もみられた。

「ゼロコロナ中止は代償伴う」 中国紙が社説で警告

私生活を大きく制限するゼロコロナ政策に関し、中国国内では肯定的な評価が出る一方、SNSを中心に疑問の声も上がっている。これに対し中国共産党の関連紙『環球時報』は編集長名の論説を掲載し、ゼロコロナを廃止すれば大きな代償が伴うと警告した。

11月4日付の同記事は、「ゼロコロナ政策の維持は高くつくが、廃止はさらに高い結果を招くことに」と題するものだ。記事は一部でゼロコロナへの批判が聞かれるとしたうえで、「私は彼らに反対する」「私が出会った人々のほとんどは、中国のダイナミックなゼロ感染者政策を支持している」と主張する。

記事はさらに、中国は医科学上のブレイクスルーを目指すべきだとも述べている。これにより、中国は「いかなるステージにおいても戦略的主導権を発揮できる」と社説は結んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中