最新記事

フランス

自由・平等・博愛の国フランスで、移民をレイプ犯と呼ぶ極右が大躍進

A Trumpian Disaster?

2021年11月3日(水)16時38分
ブレンダン・コール
エリック・ゼムール

ゼムールはフランス大統領選の構図を一気に変えるかもしれない ERIC GAILLARD-REUTERS

<右派のエリック・ゼムールが、移民排斥を唱えて急浮上。決選投票に進むシナリオも現実味を帯びてきた>

彼が本当に大統領になったりしたら「大惨事だ」と、フランスのある政界通は言い放った。彼とは、右派の政治評論家エリック・ゼムール(63)。来年4月に行われるフランス大統領選の有力候補として、急速に支持を広げている。

ゼムールは、パリ郊外のアルジェリア系ユダヤ人家庭に生まれた。移民とイスラム教の流入によってフランスが壊滅すると主張する著書が、ベストセラーになってもいる。

ゼムールはニュース専門局CNewsで人気のトーク番組を持ち、メディアでも派手に取り上げられている。CNewsは、右派系として知られる米FOXニュースのフランス版とも言える局。今年5月には、フランスのニュース専門局で初めて視聴率トップになった。

彼は「大置換」と称する陰謀説を公然と主張する。ヨーロッパ出身ではない非白人の移民が、白人に取って代わりつつあるというものだ。

昨年は番組の中で、移民の子供を「泥棒」「人殺し」「レイプ犯」と決め付けるような発言をした。同性愛者への嫌悪を口にして批判されたこともある。

こうした扇動的な言動は、FOXの番組『タッカー・カールソン・トゥナイト』に通じるものがある。番組ホストのカールソンもゼムールと同様の意見を表明して批判され、しかも米大統領選への出馬がささやかれている。

トランプと様々な共通点が

そのFOXに愛されたドナルド・トランプ前米大統領と類似点があることから、ゼムールは「フランス版トランプ」とも呼ばれている。

「トランプとの共通点は多い。テレビで知名度を高めたことや、女性に対する態度などだ」と、調査機関カンター・パブリックの国際世論調査部門を率いるエマニュエル・リビエールは言う。

「年配の保守層や富裕層と、いら立ちと不安を抱える白人労働者層の両方に受けがいいという類似点もある。フランスではこの15年で自民族中心主義の感情はおおむね衰えたが、ゼムールはあえて過激な主張を打ち出して支持を集めている」

大統領選の投票日は来年4月10日。過半数の票を獲得した候補がいなければ、その2週間後に上位2候補による決選投票が行われる。ゼムールはまだ出馬を表明していないが、既に支持率ではいい位置につけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中